「隠蔽や締め付け等のものではございません」
そんな同社が、前述のとおり社員に誓約書の提出を求めていることが判明。6日付け西日本新聞記事によれば、会社側は社員に対し文書で、社内の動向に関する報道によって「当社に対する社会からの評価が必要以上に低下してしまうという状況」「当社への深刻なダメージとなる」と説明しているという。中堅IT企業役員はいう。
「雇用契約に『業務で知り得た情報、営業情報を外部に漏らさない』という文言を盛り込んだり、社員に秘密保持契約を結ばせたりすることは現在では一般的で、広く行われている。自社や取引先に不利益が生じることを防ぐためだが、今回のビッグモーターの意図は『社内の不都合な情報が社外に漏れるとマズイから』というもので、『情報を漏らした社員に損害賠償を請求する』とまで明記したり、そもそも文書名が『誓約書』であったりと、通常の秘密保持契約とは性格が異なるのは明らか。その目的を考えれば、この誓約書がどれほど正当性・有効性を有するのかは微妙ではないか」
山岸純法律事務所代表の山岸純弁護士はいう。
「従業員には『職務専念義務』というのがありますので、就業期間中の私用メールや業務と関係ないウェブサイトやYouTubeを見たりすることを取り締まったりすることは、企業における秩序維持のために許されます。PCやメールの監視も『職務専念義務』の履行確認のため、という意味では、従業員の同意を得て行うことは十分に認められます。
もっとも、こういった誓約書は、会社の目的・動機が大切(あくまで『職務専念義務』の確認のために行われるものです)なのですが、昨今のビッグモーターの状況からすれば、従業員に対し『会社のことについて、あることないこと、余計なことをマスコミに垂れ流すなよ』という目的・動機が見え見えです。この誓約書にサインさせる行為はすぐに違法とはならないまでも、将来、ビッグモーターが誓約書違反を理由に懲戒処分をした場合、この誓約書の有効性が争われ、結果として無効とされる場合もあるでしょう」
今回の誓約書提出の目的について、ビッグモーターは当サイトの取材に対し以下の回答を寄せた。
「現在弊社では、報道機関に代表される社会との窓口として『広報部門』を設置し、窓口を一本化して、対応することにいたしました。このため、取材対応につきましては、広報部門を通じて行うようお願いするとともに、SNSなどで社内の機密情報や営業情報を書き込まないよう、徹底させていただいております。秘密保持誓約書は労働者がその職務中あるいは企業において知り得た秘密を他に漏洩してはならないという内容のものになりますので、決して隠蔽や締め付け等のものではございません」
ビッグモーターでは社員に対し厳しいノルマが課され、達成できないと役員や上司から罵詈雑言を浴びせられたりパワハラ行為を受けたりということが常態化し、それが社員を数多くの不正行為に走らせていた実態が明らかになっている。中古車業界関係者はいう。
「ビッグモーター社員が同社で働く最も大きな動機は高額な給与であり、社員はそのために厳しいノルマや上からの強烈なパワハラに耐えてきた。それゆえに、経営陣はノルマとパワハラで社員を締め付けることで利益を上げるという経営のやり方しか知らず、いくら『生まれ変わる』と言っても、何をしていいのかわからないのでは。今回の誓約書の内容をみる限り、結局、パワハラ依存経営に回帰しつつあると感じる」
(文=Business Journal編集部、協力=山岸純弁護士/山岸純法律事務所代表)
提供元・Business Journal
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