【概要】

 吸血鬼ドラキュラのモデルになったといわれる15世紀のヴラド3世は、血に飢えた怪物どころか、ビーガン(完全菜食主義者)だった可能性が最新の研究で明らかになった。ヴラド3世によって書かれた3通の手紙から血液、汗、唾液、指紋といった生体分子が抽出されて分析が行われた結果、動物性食品タンパク質が存在しないことが判明したのだ。ヴラド3世がドラキュラのモデルになった理由の1つとして彼の血の涙を流す病を患っていた可能性が指摘されている。

【詳細】

 人間の新鮮な血に飢えた吸血鬼は、その思いが叶わない時にはどうやって我が身を慰めているのだろうか。せめてもの救いとして独り食卓で血の滴るレアステーキを頬張っていたとしてもおかしくはないが――。

“ドラキュラ伯爵”はビーガンだった!

 ヒューマノイド系UMA(※1)としてのドラキュラは現代においても人知れずどこかに身を潜めているのかもしれないが、都市伝説の“ドラキュラ伯爵”にはモデルとなっている実在の人物がいる。

 ブラム・ストーカーの恐怖小説『ドラキュラ』(1897年刊)に登場する吸血鬼“ドラキュラ伯爵”のモデルといわれているのが現在のルーマニア南部にかつて存在したワラキア公国の君主であったヴラド3世だ。

ドラキュラ伯爵のモデルになったヴラド3世はビーガン(完全菜食主義者)だった! 最新の研究で判明した意外な姿
(画像=ヴラド3世 画像は「Wikipedia」より,『TOCANA』より 引用)

 ヴラド3世はオスマン帝国やドイツから国を守った国士として英雄視されている側面もあるが、その一方で敵の捕虜を手酷く拷問するなど暴虐の限りを尽くし、その処刑方法は“串刺し”であったことから、「串刺し公ヴラド」という呼び名がつけられた。一説ではその生涯の間に8万人以上の命を奪ったともいわれ、犠牲者の多くは、串刺しにされて処刑されたのだ。

“ドラキュラ伯爵”のモデルにされるに相応しい血にまみれた生涯を送ったヴラド3世だけに、普段口にしているフードメニューは血が滴るボリュームたっぷりの肉料理だとイメージするのはある意味で自然だろう。

 しかし専門家の分析によると、この血塗られた“ドラキュラ伯爵”のモデルは、実際にはビーガン(完全菜食主義者)だった可能性があるという。

 イタリアのカターニア大学をはじめとする研究チームが今年8月に「Analytical Chemistry」で発表した研究では、1457年と1475年にヴラド3世によって書かれた3通の手紙から血液、汗、唾液、指紋といった生体分子が抽出されて分析が行われた。

ドラキュラ伯爵のモデルになったヴラド3世はビーガン(完全菜食主義者)だった! 最新の研究で判明した意外な姿
(画像=画像は「ACS Publications」より,『TOCANA』より 引用)

 分析の結果、これらの体液や分泌物には動物性食品タンパク質が存在しないことが判明したのだ。これは珍しい発見であり、ヴラド3世が植物ベースの食事のみを摂取していた可能性が示唆されるのである。つまり“ドラキュラ伯爵”はイメージに反してビーガンだったというのだ。