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親の年金に依存しているから死んでもらっては困る。だから高齢の親が胃ろうのチューブや人工呼吸器につながれていても、意思疎通ができなくなっていても生き続けてもらいたい。そんなケースが現実にあるらしい。ネットのニュースでも見たことがあるし、現役の医師・杉浦敏之氏による著書「死ねない老人」でも取り上げられている。いわゆる「8050問題」が引き起こす事例の一つと言ってよいと思う。

定年はまだまだ先の話、という方もいると思うが、ちょっと想像してみてほしい。たとえば(再就職するとしても一旦)定年退職する頃に息子や娘が何らかの事情で家に戻ってきたとする。しばらくして「再出発」してくれればよいが、仕事が見つからなかったり心の病になったりしてその後もずっと家にいて互いに年を取ると、いずれは「8050」状態となる。

私の昔の知人で、会社員だが定年間近で、もう若くはない無職で引きこもりの息子と二人暮らし、という男性がいた。「8050予備軍」といったところか。

うちの近所にも似たような高齢の親子(同じく父と息子)がいた。そのまま年月が過ぎ、息子は相変わらずで、自分は老いていき、しまいにはベッドの上で身動きもとれずに無理やり栄養を体内に注入されて生かされ続けるなんて最悪だ。

もし患者本人が(脳や心臓の疾患で突然意識不明になった等により)意思表示できない状態の場合、医師のほうから家族に延命を勧めるケースもあるそうだが、基本的にはどうするか尋ねるので、「父を死なせないでください」と言われたら医師は全力でそれに応えるだろう。