とすればここからが問題です。
まず、年内YCC 及び来年春ぐらいまでのマイナス金利のそれぞれの撤廃がシナリオとして描けるでしょう。長期金利は年内に1%を超え、来年春には1.5%程度を見込んでもおかしくありません。この前提に立てば株価にはプラス面とマイナス面があります。輸出関連企業には重くのしかかる半面、輸入企業にはプラスに働きます。金利上昇とマイナス金利撤廃は銀行業にとっては大きなメリットになりますから、メガバンクから地銀まで継続的な株価上昇が見込まれます。株価を長期的に見ればプラスです。なぜならインフレは経済拡大を意味するので個別企業も成長し、株価は上昇するのです。日経平均がなぜ89年の高値を未だ超えないか、といえばインフレにならなかったからと言い切っても良いのです。
住宅ローンは長期金利上昇が固定金利ローンに影響します。一般には短期金利も上がるので変動型金利の人にも影響は出ます。個人的には日本の住宅ローンの金利はタダのような金利水準であることには変わりがなく、多少上昇したところで払えない額ではないと考えています。
問題はマスコミで、ごくわずかな金利上昇を受けて街角インタビューをすれば10中8,9が「困る!」と答えるので「この金利上昇は一般庶民に厳しいボディブローになる」という大げさな報道が大手を振ってまかり通るのです。国民は当然にして日銀に対する恨みを募らせます。これは止めてもらいたいと思います。あまりにも感情的、感覚的な話でインタビュアーが具体的に金利がいくら上がり、ローン額がどう変わるか指し示さないで街角の人に「どう思いますか?」と聞くのは片手落ちすぎるのです。
植田総裁は日本の金融政策を正常化させる、これが当面の目標に見えます。日本だけなぜ、超低金利を維持しなくてはいけないのか、それを植田氏は総裁就任時に時間をかけて検証するとし、その作業を現在も行っています。バブル崩壊後から金利を下げることで日本経済を維持してきたように見えますが、それが間違った意図となり、結果として失われた30年を生み出した原因の一つになった公算があるのではないでしょうか?
少なくとも当時から大きく世代替わりした今、金利がないという社会は時間軸に対するコスト意識が無くなることを意味します。いくら日本が安定的成長を求める国だとしても残念ながら自給自足経済ができるわけではないし、世界のリーダーの一角を占めるわけですから、本来あるべき健全な金融政策を打てる土壌を取り戻すという壮大な目標に向かうことは重要だと考えています。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年9月12日の記事より転載させていただきました。
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