歴史の教科書に描かれているように、初期の人類はマンモスのような巨大な獲物に槍を投げつけて狩りをしていました。
しかし乱獲や気候変動が災いして、大型動物は次第に姿を消し、人類はより小さな獲物をターゲットとせざるを得なくなります。
ところがイスラエル・テルアビブ大学(TAU)の研究で、この獲物の小型化こそが人類の武器を進化させ、さらには頭脳までも賢くさせた可能性が示されたのです。
今回の研究は、ピンチこそが成長と進化のチャンスになったことを雄弁に物語っています。
研究の詳細は、2023年8月24日付で学術誌『Quaternary』に掲載されました。
大型動物が狩り放題だった時代
まずは初期の人類がどのような狩りをしていたのかを見てみましょう。
これまでの研究で、人類は約300万年前に石器や棍棒を作り始め、約200万年前には本格的な狩りを始めたことが分かっています。
当時の主な獲物はゾウやサイ、カバなどの大型草食動物でした。

大型動物は並外れたパワーを持ちますが、狩りはそう難しくありません。
ハンターたちは大型動物を沼地や深い穴に追い込んで動きを制限した後、作りの簡単な木の槍を投げつけたり、棍棒で殴打しました。
その場ですぐに仕留める必要もなく、木の槍を突き刺して出血させ、弱って動けなくなるのを待ったとも考えられています。
研究主任で古人類学者のミキ・ベン=ドール(Miki Ben-Dor)氏によると「現代に生き残る狩猟民族の調査から、ゾウのような大型動物を狩るには木の槍で十分であることが証明されている」という。
しかも大型の獲物は肉や脂肪がたっぷり詰まっているため、1回の狩りで数カ月はコロニーを養うことができました。
余った肉は燻製にしたり、冷たい流水の中に置いて保存したと考えられています。

しかし自然は幸運な状況ばかりが続くのを許してくれません。
人類による乱獲や気候変動が原因となり、大型動物たちが徐々に姿を消し始めたのです。
研究では約30〜40万年前に大型草食動物の数が激減し、主な狩りの対象とはできなくなったことが分かっています。
ここに至って、人類は食糧源を大型から中型動物に切り替えることを迫られました。
そしてちょうどこの時期にネアンデルタール人、続いてホモ・サピエンス(現生人類)も登場し始めます。
では、大型動物のいなくなった野生下で、彼らはどのように狩りの仕方を変えたのでしょうか?