G20ニューデリー・サミットの様子首相官邸HPより

土曜日の記事にG20での首脳宣言は出せないのではないか、と述べたのですが、なんということはない、首脳会議をやる前に首脳宣言が出てしまいました。

メインの会議は9月9日から10日で首脳が本格討議するのは10日の予定でした。その首脳宣言は10日の「本番」前である9日の午後に出る異例の事態となったのはインドが今年、G20関連国際会議で共同宣言を全くまとめられなかった屈辱が背景です。しかしながら、今回の首脳宣言、私からすれば茶番に近いものだと考えています。

首脳宣言は必ずしも会議の最後に取りまとめられて出されるわけではなく、最近は首脳宣言そのものの価値は事務方の事前の調整能力によるところが大きいようにも感じます。今回も西側、中ロやBRICS、およびグローバルサウスといった各セクターの最大公約数の妥協の産物といえ、宣言そのものにどれだけの価値があるのか、はなはだ疑問と考えています。

その宣言の内容でウクライナが不満を表明したのは「すべての国家は領土獲得を目的とした威嚇または武力の行使を差し控えなければならない」(産経)という表現。この「すべての国家」と記載したところがミソで、誰でもプロパガンダとしては「そうだ!」といえる内容であり、合意できるのは当たり前です。

しかし、歴史上、いわゆる公約に反した行動をとる国家は常にその独自の理由を振りかざし、「そうしなくてはいけない状況が生じたのであり、我々が悪いわけではなく、そういう状況に押し込んだ周りが悪いのである」という論法に出るのです。よって今回採択された教科書的な首脳宣言の採択は高校生でも思いつく内容であり、具体性にも乏しいと言えるでしょう。

故に私は引き続き、増え続ける国際会議の意義は不明瞭、かつ、形式的であり、参加者も事務方もおざなりである、というスタンスに変わりはありません。

首脳宣言はテーマごとに多岐にわたります。上述の国際関係だけではなく、経済については経済成長に不確実性のリスクを掲げています。また食糧安全保障ではウクライナの農産物の供給の安全確保を、気候変動問題についても今までの各種国際会議での提言とさして変わりはありません。