彗星の発見を狙う、その名は「コメットハンター」

2020年に接近したネオワイズ彗星
Credit: Simgde / Wikipedia

古来より人類は星に魅せられ、絶えず夜空を観測し続けてきました。

それでも未だに私たちの太陽系内から新しい天体の発見が報告されることがあります。彗星はそんな夜空の観測者たちが見つける太陽系の稀な天体の1つです。

ハレー彗星のような短い周回軌道の彗星なら、惑星同様古くから良く知られていますが、長周期彗星は前項でも話したように、非常に長い軌道を描いて太陽系の外縁からやって来るため、まだ人類に知られていないものがたくさんあるのです。

当然その発見は滅多にあるものではありません。それでも、近年ではもっとも観測された2020年のネオワイズ彗星をはじめ、数年のスパンで新しい彗星が発見されています。

彗星の発見者はアマチュアも多い

実は彗星の発見者はプロの天文学者ではなく、趣味で天体観測を行うアマチュアの天文学者から報告されることが珍しくありません。西村彗星を発見した西村栄男さんも、アマチュア天文学者です。

こうしたアマチュア天文学者は、新しい彗星の発見を目指している人も多く、たくさんの星々の中から彗星をつかまえる人ということで、「コメットハンター(Comet Hunter)」と呼ばれます。

西村さんだけでなく、日本人のコメットハンターはレベルが高く、これまでたくさんの彗星を発見してきています。

日本人は彗星発見者が多い

国立天文台のサイトに1931年以降に日本人が発見した彗星が一覧となっていますが、2002年から2021年の20年でも14個の彗星12人の日本人によって発見されています。1人で複数の彗星を発見している人も珍しくありません。

西村さんも、C/1994 N1 (中村-西村-マッハホルツ)、C/2021 O1 (西村)と過去に複数の彗星を発見しています(C/1994 N1 マッハホルツ彗星は発見者が2人)。今回の西村彗星が、初めての彗星というわけではありません。

でも、おそらく日本人が発見してもっとも有名なのは、1995年に百武裕司さんが発見した、百武彗星(C/1995 Y1 (Hyakutake) )でしょう。

日本人が発見したということと、肉眼で観測できる明るさということで話題になりました。ぼやっとして尾はよくわからなかったものの、しっかり目で見えた記憶があります。

西村彗星を観測するならいつ?

日の出前の西村彗星の位置
Credit: 国立天文台

9月上旬には夜明け前の東の空に出ています。近くで明るく目立つ、金星が目印になるでしょう。ただ、西村彗星は明るくなるにつれて、高度は低くなってしまいます。

休日ということもあり、観測を狙うなら9月9日(土)でしょう。日の出45分前の4時33分(東京都)のとき方角は東北東で地平からの高度は11°で、明るさは約4.5等と予想されています。

空が明るくなってきているので、双眼鏡は必須ですし、昇ってきた太陽を絶対に見ないように気をつけましょう。

9月14日からは西の空に見えるようになり、19日までが明るさも約2.5等でもっとも明るくなります。

しかし、肉眼レベルの明るさでも地平にかなり近い高度5°以下であることや、空もまだ明るい時間帯なので観測は難しそうですが、もしかしたら伸びた尾をカメラで撮ることはできるかもしれません。

とはいえ、以上はあくまで予想で、西村彗星は、太陽に非常に接近するタイプの彗星です。このタイプの彗星は、予想以上に彗星活動が活発になって明るくなったり、太陽の熱が強すぎて崩壊してしまい、暗くなることもあるのだとか。

どうなるのかわからない面白さがあるので、注視してみてください。

参考文献
国立天文台 西村彗星が太陽に接近
国立天文台 彗星とはどのような天体か
Wikipedia C/2023 P1 (Nishimura)
国立天文台 アイソン彗星
国立天文台 パンスターズ彗星
国立天文台 日本人が発見した彗星