2024年度の財政予算に関する議会審議で6日、ドイツのショルツ首相は与野党、地方自治体の首長に向かって自称「ドイツ協定」を提案し、停滞する国民経済回復のために「一体化」を呼びかけた。3日のジョギングで倒れて右目を負傷し、眼帯をつけながらベルリンの連邦議会の演壇に立った首相は厳しい姿勢で話しかけた。

連邦議会の財政予算審議で語るショルツ首相(2023年9月6日、独連邦議会公式サイドから)

ショルツ首相は、「われわれはこれまで以上にテンポを加速し、国民経済の近代化、堅実な経済を構築していかなければならない。国民はわが国が再生することを願っている。私も願っている。争って時間を浪費している場合ではない」と、キリスト教民主同盟(CDU)の議員席の最前列に座るメルツ党首に目をやりながら語り掛けた。その語調は、海賊船のキャプテンのような力強いものだった。

独週刊誌ツァイト(電子版)で6日、フェルディナンド・オットー記者は、「国民や与野党に向かって一体化が必要だという訴えは、取りも直さず現政権の無力さを認めることになる」と早速、辛辣に論評している。そして「お互いに、尊重し合い、支え合う―これらはショルツ首相の議会活動の特徴的な用語だ。ドイツ協定も同様だ。それらは複数形でのみ正常に機能する。多くの社会的孤立傾向に対抗するため、首相は新しい『私たち』を提案している」と分析する。

財政予算を議会で審議する時、通常は与野党間の激しい対決が予想されるが、ショルツ首相はそれに先駆け、「対決している時ではなく、団結すべきだ」と主張し、それを「ドイツ協定」と呼んで、与野党、州、地方自治体の首長に政府と一体化を呼び掛けたわけだ。

オットー記者は、「ショルツ首相にとって予算はあまり重要ではないのだ。ショルツ連合政権(信号機政権)は自身の政策に対する造語や効果的な見出しを作るのが得意だ。成長機会法、ドイツ・テンポなどの造語、キャッチフレーズを生み出し、今度は『ドイツ協定』を結ぶというのだ」と、首相の提案を冷ややかに受け取っている。

具体的には、クリーンで安全かつ手頃な価格のエネルギー供給、現代的なデジタルインフラ、迅速で効率的なデジタル行政、強力な企業、そして停滞しつつある住宅建設などの促進を挙げている。ショルツ首相は、「国民はこの停滞にうんざりしている。私もだ。私たちは一体となることによってしか数十年にわたって私たちの国を覆ってきた官僚主義とリスク回避のカビを振り落とすことができない」と強調した。