愛人も、デフォルトがマリ=アニエスなので、彼女とロクサーヌを比べちゃかわいそう。役にあってて頑張ってたけど、ちょっと人間味が足りない?とはいえ、マノンとデグリュー見るのに忙しく、あまり視線を向けてなかった。

久々の「マノン」を堪能。ミリアムラヴァーの親友とうるむ目を交わし合いながら、夢中になって拍手を送る。
来シーズンでついに引退、信じられない信じたくない、、。残されたあと数回のミリアム体験が、どうぞ感動的なものでありますよう。

今夜は夏至。23時近く、ガルニエの西の空はまだまだ明るく、フェットドラミュージック(音楽祭)の日なので、至る所で賑やかな音楽会。
また来週、パレ・ガルニエ。

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以下、2018年4〜5月の感想です。
オペラ座バレエ、マノン。レティシアが見たくて、珍しく初日のチケット買った。初日は基本、避ける。ダンサーたちがまだまだ作品に入り込んでいなくてこなれてないのだもの。今夜もそう。みんな、18世紀じゃなくて21世紀に生きている感じ。
1人がんばったのはレティシア。技術完璧、腕美しく、表情過不足なく饒舌。昔からの大好きダンサーの初マノン。年齢的にどうかな、と思っていたのはまったくの杞憂。おみごと!マチューは、マチューにしては足下ぐらつくことも多く、絶好調ではないのが残念。でもまあ、美しいデグリュー。

オレリー・デュポンのアデュー公演はマノン(ほんとは、椿姫でラストを飾りたかったらしい。2年前にアニエスがやっちゃったからねえ・・)。エルヴェが怪我したため、ロベルト・ボッレをゲストに呼んだ(他のオペラ座ダンサーでは役不足ということ(笑)。まあ、気持ちは分かる)。
先月の初日とは、まったく違う舞台。コールは気持ちよく作品になじんでいるし、なにより主役2人が圧巻。オレリの完璧すぎる技術と表現に、ボッレがこれまた完璧に華々しく寄り添ってくる。まるでジャズのセッションの掛け合いみたいな、エッジが効いて火花がきらきら舞い散るようなパドゥドゥの数々。あんなに喜び満ちあふれて輝かしい寝室のパトゥドゥ、初めてだ。あまりにまぶしくて美しくて涙がこぼれる。
オレリの、身体能力の高さにも増す女優力を堪能。細胞の一つ一つが何かを表現しているみたいな細かなニュアンス、本当に素晴らしい。やっぱりマノンでなく椿姫で最後を見たかったなあ。マノン、2幕まではいいけれど、3幕は衣装も髪も可愛くないし踊りもデグリュー中心だし。
久しぶりのボッレ、彼はマニュの進化版だと改めて思う(文句なしの体格と顔は、マニュにはなかったけれど)。マニュみたいに、舞台にいるだけでそこが輝き、全身全霊が踊る喜びに包まれる感じで、完璧な技術をサクサクこなし、同時に役作りもソツない。今のパリのエトワール達には誰も出来ないこと。みんな、自分の中に不安を抱えていたり、観客にその不安感が伝わって来たり、いかにも一生懸命踊ってます!みたいになっちゃったり・・。強いて言えばエルヴェとマチアスが一番近いかな。ジョゼやニコラ、ローラン、マニュみたいな、完璧な技術と安心感があってどんな役でも踊りこなせるダンサーが、ちょっと恋しい。
オレリは、マノンを5回踊ってオペラ座を去る。毎夜スタンディングオーベーションだ、と聞いていたけれど、今夜もそう。オペラ座の至宝ダンサーの最後の舞台に、会場が感動に包まれた。
17年間の感動に、心からメルシーボク、オレリ。

夕べのマノン。デ・グリューを踊ったユーゴ・マルシャンに感動!
今年スジェにあがったばかりの未来のエトワール君。技術はもちろんちょこちょこ不備があるけれど、オペラ座で初めて見るようなそれは見事なアラベスクに感嘆。そして、リリックでしなやか、ポエティックでちょっとナイーヴで愛情と苦悩あふれる演技に息をのむ。オペラ座で少なくとも15回は見て来たマノンだけど、最上のデ・グリューだなあ。1幕最初のヴァリアシオンと3幕ラストシーン、最高。泣ける。レヴェランスの時、ずっと放心状態の顔がまたいい。来シーズンは、是非ロメオを踊ってほしい。そしていつか椿姫のアルマンも、ね。
フランソワのレスコーも、見事すぎる技術に加え、こちらも芸達者なのですばらしいできばえ。カデール、そしてヤン・サイズ以来初めて、納得できるレスコーに出会えた。
ヤンの小技が利いた演技もさすがで、男子3名の演技力の素晴らしさに圧倒されたマノン最終日。初日のレティシア&マチューよりも、先週のオレリ&ボッレよりも、今夜が(マノンがいまひとつだったにも関わらず(笑))一番。あー、いいソワレだった。

編集部より:この記事は加納雪乃さんのブログ「パリのおいしい日々5」2023年6月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「パリのおいしい日々5」をご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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