「政府の崩壊」の結果として官憲の暴走

この朝鮮人虐殺を巡っては官憲が組織的計画的に殺傷に関与・煽動した事実が強調されるが、「地震予知」は今日でも実現していない技術なのだから、震災直後は官憲も相当な混乱に陥ったと考えるべきである。彼らの暴走は差別意識の結果というより「政府の崩壊」現象と解釈するほうが自然である。

官憲の暴走を考えるうえで、首都に駐屯・駐在する軍事・治安組織は精鋭であり高い使命感を有していることも重要である。彼らはまさに国家の中枢を守らんとする部隊だ。

こういう部隊が突然の地上の崩壊により「政府の崩壊」「国家の瓦解」を予感したときに、その高い使命感が瞬時に肥大化、攻撃(部隊の主観は防衛)へと走らせることは不思議なことではない。彼らの暴走は終戦直後に皇居を一部占領した陸軍強硬派と同じといえるのではないか。

職務に意欲的な部隊こそ暴走を起こすという視点を持つべきである。

そしてこの視点で言えば現在でも陸上自衛隊第1普通科連隊、警視庁機動隊など東京に駐屯・駐在する軍事・治安組織は潜在的に暴走の危険性を孕んでいる。これを防止するためのシンプルな対策は、被災地外の部隊を迅速に被災地へ集結させることである。

また、被災地での支援活動を自国の組織に限る必要もないから、外国組織の支援を受けいれることも効果的だろう。既に東日本大震災では在日米軍による「トモダチ作戦」が実施されている事実を見ても、日本人は少なくとも同盟国軍隊による災害支援には大きな抵抗はないと思われる。

被災地外の自衛隊・警察官の被災地への迅速な派遣、国際支援の積極的受入れを推進すれば関東大震災直後に起きた官憲の混乱も抑制でき、在日外国人を攻撃することはないだろう。

ヘイトではなく災害を語れ ・防火対策に重点を置いた防災対策 ・海外を含む被災地外の軍事・治安組織の被災地への迅速な派遣

この二つを満たしていれば関東大震災直後に発生した自警団、官憲による在日外国人への殺傷行為は防止可能であり、それを証明しているのが関東大震災後の100年間「虐殺はなかった」という事実である。

この事実を踏まえ特に重点を置くべきことは、木造住宅の解消(耐火・耐震住宅へ転換)であることは言うまでもない。木造住宅が放置されている最大の理由は日本では土地の私的所有権が強く権利調整が困難なことが挙げられる。

政治家は土地収用法を始めたとした関係法への理解を深め必要な法改正を行うべきだ。

同時にSNS上の差別表現を根拠とする朝鮮人虐殺の再来、例えば「SNS上にはヘイトスピーチがあふれており、100年前と同じ虐殺を引き起こす危険性がある」などの主張は断固拒否すべきである。

歴史のある一点に着目し、現在とのほんのわずかな共通点を根拠に「また起きる可能性がある」など著しい飛躍である。

「彼は目が二つあり耳も二つある。口も一つしかない。ヒトラーと一緒だ。彼を放置すれば再びホロコーストが起きる」という主張と同レベルであり、悪質な煽動に過ぎない。

朝鮮人虐殺自体を否定する言説が生まれたのは「歴史修正主義の台頭」ではなく、悪質な煽動への反発だろう。

当たり前だが、災害多発国の日本で大規模災害を振り返る際に、災害そのものではなく「差別」「ヘイト」について語られるようなことは絶対にあってはならない。

今、私達がやることは関東大震災後の100年間「虐殺はなかった」事実を直視し、まっとうな防災対策をやることである。

「負の歴史を直視せよ」と唱え内務省作成の公文書を読み解き朝鮮人虐殺や歴史修正主義云々語る学者・マスコミ・市民の方はこんなことに貴重な人生を浪費するのではなく消火器の操作法でも覚えることをお薦めする。

【参考】

・災害教訓の継承に関する専門調査会報告書 平成18年7月 ・関東大震災 被害を拡大させた“火の粉”の恐怖

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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