秋本真利議員が洋上風力の入札不正にからむ受託収賄の容疑で、東京地検特捜部に逮捕された。これ自体は予想されたことだが、こんな小物が入札ルールの変更なんかできるはずがない。
問題は追及が「本丸」まで行くかどうかである。検察の次のターゲットは誰か。この経緯を振り返って考えてみよう(肩書きはいずれも当時)。
2021年12月24日に、第1ラウンドの入札で3海域ですべて三菱商事グループが落札した。最低価格は11.99円/kWhという事前の予想を大きく下回るもので、当初は「コスト競争力のある再エネの拡大は大変心強い」など再エネ推進派からも評価は高く、同じルールで12月28日に第2ラウンドの公募が開始された。
これについて年明け2022年1月の萩生田光一経産相の記者会見で、彼はこう語っている。
事業計画の内容について、資金調達内容やそのリスク分析、あるいは対応について、今後精査して、かなり低価格という御指摘があったのですけれども、欧州なんかに比べるとまだ高いんですね。[中略]
ただ私、個人的にはいろいろな仕組みを見てみたかったなという気持ちがありますので、他のプロジェクトの人たちにも今後参加しやすいような仕組みというのは、是非今回の結果を踏まえていろいろ検討してみようかなと思っているところです。
これがのちに「萩生田氏がルール変更を指示した」といわれる根拠だが、その前段で「欧州なんかに比べるとまだ高い」と言っており、彼が6月に予定されていた〆切を延期してまでルールを変更するつもりだったとは思えない。
昨年2月17日の衆議院予算委員会で、秋本は国会質問で入札の審査基準の変更を萩生田経産相に要求した。
このとき秋本が制度の見直しを求めたのに対して、萩生田大臣は「試合のルールを決めて公示をしちゃって、そこに参加している人たちがいらっしゃる以上は、やはり途中でルールを変えるというのはどうかなと私は思っているんです」と否定的に答弁している。
ところが萩生田氏は3月18日の記者会見で突然、入札ルールの変更を発表した。
最後、3点目ですが、洋上風力の公募を見直します。ウクライナ情勢を踏まえ、エネルギー安全保障の面でも重要な脱炭素の国産エネルギー源として、エネルギー基本計画に基づく再エネ導入加速が急務です。
特に洋上風力は昨年末の再エネ海域利用法に基づく公募結果により、実際に太陽光等と競争可能なコストの大規模電源であることが明らかになりました。これまでも運転開始が早いことは評価項目の一部でしたが、今後の公募においては、価格だけでなく早期の導入という観点でも各社の競争を促す仕組みとしたいと思います。
このように価格より早期導入を重視しろというのは、秋本など再エネ議連が主張してきた論点である。奇妙なのは、この1ヶ月前には「途中でルールを変えるというのはどうかな」と言っていた萩生田氏が、いきなり入札延期を決めたことだ。
これは直後の3月22日の経産省と国交省の合同会議で事後承認された。このような前代未聞の変更をトップダウンで決められるのは、萩生田氏より格上の政治家しかいない。