なぜ保有先、すなわち「国債の利払い先」の明細が重要なのかと言えば、海外の保有先以外の国内の保有先に支払われた国債の利息は、その多くが日本国内に留保されて、法人なら投資や賃上げや内部留保などに、個人なら預貯金や消費などに回されることになるからだ。

次に日本の国家予算に占める「国債費」の割合はどうなっているかを調べると、昨年5月31日の「日経」記事に22年度当初予算に関して、次のように書いてある。(太字は筆者)

国債費とは 国の借金である国債の償還や利子の返済のために充てる費用。2022年度の国の一般会計当初予算107兆5964億円のうち、国債費は24兆3393億円に上る。21年度当初予算に比べて5800億円程度増えて過去最大となった。一般会計のうち22.6%を国債費が占める。

国債費は償還期限を迎えた国債の元本を返済するための償還費と、発行した国債の利払い費の2つに分かれる。22年度当初予算で償還費は16兆733億円、利払い費は8兆2660億円だった。赤字国債や建設国債など普通国債の発行残高は増加の一途をたどり、3月末時点で1000兆円に迫る。積み上がった国債の償還費と利払い費は毎年の予算編成を制約する要因になる。

太字部分は、財務省を代弁する「日経」らしい書き振りだが、これとは「異なる角度から」考える識者も多い。それはさて措き、約8兆円余りの利払いは、国債の保有比率やそれぞれが保有する国債の種類などに基づいて、日銀、生保や損保、銀行、その他の国内及び海外の保有先に支払われることになる。

償還費約16兆円は「60年償還ルール」採用の結果である。これは日本独自の「ガラパゴス・ルール」で、平たく言えば「国債残高1000兆円を60年で割った1年分の数字」をここに計上する。とはいえ、実際に償還はせず借り換え処理をしているに過ぎないから、その分の国債残高が減る訳ではない。

よって、「60年償還ルール」を辞めてしまえばこの16兆円余りはゼロに出来るし、あるいは防衛増税に絡めて萩生田政調会長がポロっと漏らしたように、仮に「80年償還ルール」にすれば12.5兆円となり、16兆円との差額3.5兆円を他に(例えば防衛費)回せることになる。

利払いに戻れば、生保損保や銀行や年金基金などに支払われた金額は、一部は再度国債の購入に回され、また一部は従業員の賃上げなどにも使われるだろう。家計に入るものも、一部は消費に使われ、預貯金に回された分は銀行などが国債を買うのに使われるはずで、これらは国内経済の活性化に資する。

では日銀に支払われた金額の行方はどうなるのだろうか。そこで、日銀の株主構成などを日銀のサイトで調べると、令和5年3月末の出資構成は、政府55%、民間45%、民間の内訳は個人40.6%、金融機関1.8%、公共団体0.2%、その他法人2.4%であり、資本金は1億円と書いてある。

そして但し書きには、「剰余金の配当が払込出資額に対し年5%に制限されている」とある。つまり、日銀はどんなに儲かろうとも、資本金1億円の5%、わずか年間5百万円しか配当しない。これでは、日銀の利益が膨れ上がってしまうではないか、との疑問が生じるが、その心配は無用だ。

その答えは「国庫納付金」にある。日銀サイトにこうある。

日本銀行が得た最終的な利益、すなわち、所要の経費や税金を支払った後の当期剰余金は、準備金や出資者への配当に充当されるものを除き、国民の財産として、国庫に納付されます(日本銀行法第53条)。これを国庫納付金といいます。

つまり、日銀の国債保有が増えれば増えるほど、「国庫納付金=国民の財産」が増える仕組みになっているとも言える。そして、5月29日の「ブルームバーグ」は日銀の22年度決算を次のように報じている。

日本銀行が29日に発表した2022年度決算によると、最終利益に当たる当期剰余金は2兆875億円となり、前年から7629億円増加した。1998年の新日銀法の施行以降で最高。この結果、国庫納付金も1兆9831億円と過去最高となった。

以上を纏めるととこういうことになろう。すなわち、この3月末の国債残高は1080兆円になった。他方、国の一般会計予算(22年度当初予算ベース)は107兆5964億円で、そのうちの国債費は、償還費が16兆733億円、利払い費が8兆2660億円の合計24兆3393億円となっている。

国債費のうち、日本独自の「60年償還ルール」を廃止すれば償還費約16兆円はゼロになる。利払い費8兆円強も、海外流出は保有比率に従えば7%余りに過ぎない。民間への利払いは消費や投資や賃上げに回り、家計の金融資産増加や経済活性化に資する。そして何より、日銀への利払いは他の損益と合算され剰余金として国庫に納付され、国民の財産となる。

この様に、円安の功罪やとかく思惑が絡む金利との問題はさて置いて、国債残高と金利に限れば、オープンソースを半日分析するだけでも、玉川氏が公共の電波を使って語るのとは「異なる論点」が浮き彫りになる。テレビメディアには、放送法第4条に沿う偏りのない番組作りを求めたい。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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