免税事業者がとるべき対策
免税事業者が課税事業者に移行するかどうかは任意でも、買い手から移行の要請があれば、結局は買い手との力関係によって、要請に応じるかどうかが決まるのではないのか。公認会計士・税理士の植村拓真氏はいう。
「そういう実態はあるだろう。今後もその買い手との取引を継続したい場合、相談させてほしいというアプローチで、消費税額分の支払いについて交渉の場を求めるという方法もある。例えば消費税額分の10%を買い手が5%、売り手が5%というように比率を決めて、双方で負担し合う方法もある」
免税事業者にとって最大の懸念材料は取引停止である。免税事業者の継続を理由とした取引停止は、独占禁止法に違反するおそれがあるとはいえ、買い手側が差し障りのない理由をつけて取引を打ち切ることも、十分に想定できるのではないのか。
「本当の理由は課税事業者に移行しないことであっても、別の理由で取引を打ち切るケースが各業界で出るだろう。取引を打ち切られる本当の理由が分からないケースが増えてくるかもしれない」(植村氏)
この懸念に対して、公取委は「課税事業者に移行しないことを理由に取引を停止したのに、他の見せかけの理由で取引を停止したという実態があれば個別の指導に入ることになる」と方針を述べる。
免税事業者が今後も免税事業者を継続したいのなら、代替可能な事業者ではなく必要不可欠な事業者へと、買い手に対して力をつけることに尽きる。だが、まずは2つの対策が必要だと植村氏は提言する。
ひとつは、特定の買い手に売上を依存する立場なら、課税事業者への移行の要請やその後の支払い条件をのまざるを得なくなるので、販売先を分散化すること。もうひとつは、課税事業者へ移行するメリットとデメリットを比較検討して、課税事業者に移行するか否かを判断すること。メリットは今後も取引関係を継続できることで、デメリットは消費税額分の支払いの発生と事務処理の煩雑化である。
なお、公正取引委員会は関係省庁と連携して以下のインボイス制度の相談窓口を開設している。
invoice_soudan.pdf (jftc.go.jp)
(文=Business Journal編集部、協力=植村拓真/公認会計士・税理士)
提供元・Business Journal
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