声明文の第1項目には、「国際連合総会でカザフスタン共和国の提案に基づき制定された核実験に対する国際デー(IDANT)に際し、私たちは核実験のない世界を実現するための取り組みを再確認し、包括的核実験禁止条約(CTBT)を効力を持つものとするための努力を倍加させることを表明する」と記されている。

そして第2項目で、「セミパラチンスク核実験場が1991年8月29日に閉鎖されたことは、カザフスタンと国際社会にとって象徴的な意義を持つ。この重要な出来事は強力な政治的メッセージを発し、1996年のCTBT採択に繋がる広範な国際的取り組みにおいて重要な役割を果たした。その後、カザフスタンは一貫して条約とその検証体制の構築を支持してきた」と指摘し、カザフは核廃絶の実現のためにこれまで努力を行ってきたと述べている。

カザフのカシムジョマルト・トカエフ大統領は今年7月5日、過剰な放射能汚染の影響を受けたセミパラチンスク実験場跡地および周辺地域に核安全地域を設立する道を開く法律に署名している。同時に、CTBTの早期発効を求めた。すべての国に対して、核実験のモラトリアムを維持し、CTBTに未署名または未批准の国は、迅速に署名および批准するよう奨励してきた。

ちなみに、カザフは、2024年には核兵器の禁止に関する条約の第11回再検討会議の準備委員会の第2回会合および核兵器禁止条約の第3回締約国会議(日程未定)の議長を務める。

(CTBTは署名開始から今年で27年目を迎えたが、法的にはまだ発効していない。署名国数は8月現在、186国、批准国178国だ。その数字自体は既に普遍的な条約水準だが、条約発効には核開発能力を有する44カ国=発効要件国の署名、批准が条件となっている。その44カ国中で署名・批准した国は36カ国に留まり、条約発効には8カ国の署名・批准が依然欠けている。米国は1996年9月24日にCTBTに署名しているが、クリントン政権時代の上院が1999年10月、批准を拒否。それ以後、米国は批准していない)。

国連の年次総会は9月中旬に開会する。CTBT条約発効促進会議(第14条会議)は今月22日、ニューヨークの国連本部で開催される。カザフの国連外交はCTBTの早期発効を促すために走り出す。カザフの「9月の平和論」に注目したい。

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年9月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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