米8月雇用統計は、こちらで紹介しましたように、非農業部門就業者数が3カ月連続で20万人を割り込みつつ、労働参加率が2020年2月の水準へ上昇するにつれ、失業率が2022年2月以来の水準へ急伸しました。また、労働参加率の改善に合わせ、平均時給が再び鈍化するなど、労働市場減速の始まりを感じさせます。

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NFPに視点を戻し業種別の動向をみると、娯楽・宿泊は7月の20.4%→21.4%へ上昇。一方で、食品・サービスは7月の15.0%→8.0%に低下していました。なお、娯楽・宿泊は2020年2月の水準を回復していない3業種のうちの1つです。

チャート:娯楽・宿泊の割合は上昇も、食品・サービスは低下

nfp23aug_secfoods (出所:My Big Apple NY)

そのほか、業種別や性別や人種、学歴などではどうなったのか、詳細は以下の通り。

〇平均時給

平均時給は6月に続き前月比0.4%上昇の33.74ド ル(約4,790円)と、市場予想の0.3%を上回った。17カ月連続で上昇している。前年同月比も6月に続き4.4%上昇、市場予想の4.3%を超えた。

業種別を前月比でみると、平均時給の伸び0.2%以上だったのは13業種中で6業種で、前月の速報値ベースでの9業種を下回った。今回の1位はその他サービス(0.7%上昇)で、2位は建設と娯楽・宿泊(0.5%上昇)、4位は教育・健康と輸送・倉庫(0.4%上昇)、6位は専門サービス(0.2%上昇)だった。一方で、製造業が横ばいだったほか、6業種が前月比マイナスとなり、前月の1業種を上回った。今回は公益(0.6%の下落)、金融(1.4%の下落)、鉱業・伐採(1.5%の下落)、情報(1.9%の下落、2カ月連続でマイナス)、卸売(2.2%の下落)、小売(2.4%の下落)となった。

チャート:業種別でみた前月比の平均時給、チャート内の数字は平均時給額

nfp23aug_wagesector (作成:My Big Apple NY)

チャート:平均時給の伸びは、労働参加率の改善につれ鈍化

nfp23aug_lpwage (作成:My Big Apple NY)

〇労働参加率

労働参加率は前月まで5ヵ月連続で62.6%だったが、今回は62.8%と2020年2月の水準を回復した。働き盛りの男性(25~54歳)をみると、25~54歳の白人を除き全て低下した。特に、25~34歳の全米の男性は前月比0.5ポイントも低下した。以下は全米男性が季節調整済みで、白人は季節調整前となる。

・25~54歳 89.3%、前月は89.4%と2020年1月の水準と一致 ・25~54歳(白人) 90.2%と2020年3月(90.3%)以来の高水準、前月は90.1%、20年2月は90.6% ・25~34歳 89.5%、前月は90.0%と2012年10月以来の高水準 ・25~34歳(白人) 90.6%、前月は90.6%と2020年2月の水準に並ぶ

チャート:働き盛りの男性はそろって上昇、25~54歳は2020年1月以来、25~34歳は2012年10月以来の高水準

nfp23aug_25-54 (作成:My Big Apple NY)

働き盛りの女性は、25~54歳と25~34歳でそろって上昇した。

・25~54歳 77.6%、前月は77.5%、4月は77.8%と統計開始以来で最高 ・25~34歳 78.5%と2022年8月以来(78.6%)高水準、当時は20年1月に並び過去最高

65歳以上の高齢者の労働参加率は、男性が改善し、女性は2020年2月以来の高水準近くを保った。

・男性 23.1%と5カ月ぶりの水準を回復、前月まで2カ月連続で23.0%、なお、2022年10月は24.3%と2月と並び20年2月(25.2%)以来の水準を回復 ・女性 16.1%、前月は16.2%と2020年2月以来の高水準

チャート:65歳以上の高齢者の労働参加率、女性が2020年2月以来の水準へ急伸した後も高止まり続く

nfp23aug_elderies (作成:My Big Apple NY)

労働参加率を16~24歳、20~24歳、55歳以上で分けてみると、そろって上昇した。

・16~19歳 36.9%と4カ月ぶりの水準を回復、前月は35.7%と2021年6月以来の低水準 ・20~24歳 71.2%と4カ月ぶりの水準を回復、前月は70.6%と2022年11月以来の低水準 ・55歳以上 38.8%と8ヵ月ぶりの水準へ上昇、前月は38.6%

チャート:20~24歳、前月の0.6pt改善の71.5%

nfp23aug_16-24_55 (作成:My Big Apple NY)

〇縁辺労働者

縁辺労働者(ここでは直近4週間にわたり職探しをしていないが、職を求める非労働力人口)で「今すぐ仕事が欲しい」と回答した人々の数は、労働参加率が改善した半面、前月比2.3%増の537.0万人と3カ月ぶりに増加した。男性が同1.4%減の248.0万人と3カ月連続で減少したものの、女性は同5.7%増の289.0万人と3カ月連続で増加した。男女差は3カ月連続で女性が男性を上回った。

チャート:職を望む非労働力人口、20年1月以来の500万人割れとコロナ前の水準を回復

nfp23aug_nwjn (作成:My Big Apple NY)

〇男女別の労働参加率と失業率

男女別の労働参加率は、今回はそろって上昇した。男性は前月の68.0%→68.2%と、20年3月(68.5%)以来の高水準だった3月の68.4%に迫った。女性は前月の57.4%→57.7%と20年2月(57.9%)以来の水準へ切り上げた。

チャート:男女別の労働参加率、女性の改善が著しい

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男女の失業率は労働参加率に合わせ、そろって上昇。男性は前月の3.6%→4.0%と2022年1月以来の水準へ急伸した。女性も前月の3.4%→3.5%と3カ月ぶりの水準へ切り返した。なお、女性は4月に3.3%と1952年9月以来の低水準を記録していた。

チャート:男性の失業率は22年1月以来の水準へ急伸、女性も小幅上昇

nfp23aug_mwur (作成:My Big Apple NY)