このことは、トランプ氏が大統領に就任し、トランプ派の共和党勢力が議会で議席を伸ばしたら、ウクライナ支援が止まるかもしれない、と言うことだけを意味するのではない。現在の、あるいは過去のアメリカからウクライナへの武器支援を通じて、バイデン政権関係者が、暗に、あるいは明示的に、支援者の希望として、政治日程を意識してほしい、とウクライナ側に伝えている(言わなくてもわかる)はずだ、ということを意味するのである。
政治日程の要請から言えば、巨額の支援を受けているウクライナに課せられている命題は、2024年秋までに決定的な戦果をあげること、である。2025年にロシア占領地を解放する作戦は、立案できない。24年秋までに遂行される作戦でなければならない。バイデン政権関係者であれば、できれば大統領指名が確定する24年夏までには決定的な戦果が確定してアメリカ国民に強い印象づけられている状況がほしいだろう。
ということは、逆に言えば、23年の間に決定的な戦果がなくても、まだ焦る必要はない。23年の世論調査などは、いつでもすぐにひっくり返る。24年に戦果をあげるための準備を進めておくことが、より重要である。
その観点から言えば、冬になる前に一定の前進を果たしておく必要はある。そうでなければ24年前半に決定的な戦果を挙げることが著しく困難になるからだ。そのため準備の度合いにかかわらず、「反転攻勢」は、23年夏よりは前に、開始されなければならなかった。
私自身は、この政治日程の感覚を基準にして、ウクライナ軍の「反転攻勢」のニュースを見ている。今のところ感じているのは、ウクライナ軍の動きが、はっきりと上述の政治日程を意識したものになっている、ということだ。 2023年中の全てのロシア占領地域の解放はないだろう。そもそもウクライナ軍は、それを計画しているように見えない。しかし24年前半のうちにそれを達成することが、目標だ。現在のところ、そのための布石は着々と打たれている。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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