ちなみに、セルナー氏は、ニュージーランド(NZ)のクライストチャーチで2019年3月15日、2カ所のイスラム寺院を襲撃し、50人を殺害したブレントン・タラント容疑者(当時28)から寄付金を受け取っていたことが判明し、物議をかもしたことがある
三島由紀夫は欧州の極右の青年組織では人気がある知識人の一人だ。IBOのリーダー、マーティン・セルナー氏は「三島由紀夫」の大ファンで自身のオンラインショップ「Phalanx-Europa」で三島が刀をもってポーズしている写真をコピーしたTシャツ、ポスターなどを売っている。セルナー氏はツイッターで「僕は三島ファンです」と述べていた。
同氏は、「ナチスヒトラーの国家社会主義にはもはや希望がない」と断言する一方、「民主主義で失ってしまった“大義の為に生きる”という三島の精神には心が動かされる」と証言している。セルナー氏はそれを「新しい右翼」と呼んでいる。
三島由紀夫は1970年11月25日、民兵組織「楯の会」を引き連れて自衛隊市ヶ谷駐屯地に侵入し、東部方面総監を監禁し、戦後失われた日本の精神を回復し、国家刷新のために立ち上がろうと、バルコニーから呼び掛けたが、それに応じる者がいないと分かると、切腹自殺した著名な作家だ。三島事件は日本社会ばかりか、世界にも大きな衝撃を投じた。
FPOのキックル党首は2日、党青年グループのネオナチ的なビデオについて「素晴らしい内容だ」と賞賛する一方、批判する与野党に対しては「与党国民党が躍進するFPOを落とすためにFPOバッシングを行っている」と指摘、国民党の選挙作戦の一環と受け取り、冷静を装っている。
参考までに、隣国ドイツの南部、バイエルン州では現在、「自由な有権者同盟」(FW)の党首アイワンガー副首相兼経済相が17歳の時に学校で反ユダヤ主義のビラを作成していた、という非難を受け、大きな政治問題となっている。ビラの内容がメディアに流れると、同副首相の辞任を要求する声が高まってきている。同州では10月に州議会選挙が行われることもあって、論争は過熱している。
「キリスト教社会同盟」(CSU)党首のゼーダー州首相は3日、記者会見を開き、アイワンガ―副首相に25項目の質問を提示し、その回答を受け取ったことを明らかにし、「完全に満足しているわけではないが、同副首相の辞任を要求しない」と述べた。なお、同副首相は「私は書いていない。魔女狩りに屈するつもりはない」と主張し、野党側の辞任要求を拒否している。
バイエルン州副首相のナチスヒトラー賛美のビラ作成容疑、そしてオーストリアではFPO青年グループのネオナチ的な動画がメディアに報じられ、大きな政治問題となっているが、この種の騒動は今回が初めてではない。
ナチス・ヒトラー政権の過去を引きずるドイツやオーストリアでは過去、頻繁に起きてきた。ただ、欧州で極右運動が躍進し、それを阻止しようとする保守派勢力と左派勢力の巻返しなどが絡んできて、事態は混とんとしている。9月に入り、両国は一足早くホットな政治シーズンに突入しきた。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年9月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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