FPOの躍進はAfDと同様に厳格な移民・難民政策の推進、国境警備の強化などが挙げられるが、ネハンマー政権の経済政策での無策も大きい。例えば、オーストリアのインフレは一時期11%を記録、ここにきてインフレ率は少し低下したが、7月のインフレ率はガソリンン代の高騰もあって7・5%と依然高い。例えば、オランダのインフレ率は3%、ベルギーやスペインは2・4%とオーストリアに比べかなり低い。オーストリアと同様、インフレ高で苦しんできた隣国ドイツでも6・1%だ。
国民の生活を直撃する物価高、エネルギー代の高騰、住居費のアップなどについて、ネハンマー政権はこれまでほぼ無策で、一時的な支援金の供与だけに終わり、エネルギ―代の上限、消費税の一時凍結などといった抜本的な対策は行わなかった。嵐が通り過ぎるのを待つといった姿勢に、国民はネハンマー政権への信頼を失っている。
繰り返しになるが、FPOが次期選挙でトップとなったとしても、現時点ではどの政党もFPOとの連立を拒否しているから、FPO主導の政権発足の見通しはない。ただし、州レベルでは既にニーダーエステライヒ州、オーバーエステライヒ州、ザルツブルク州の3州では、国民党とFPOの連立政権が発足している。国民党が選挙で第2党、ないしは第3党に後退した場合、ウォルフガング・シュッセル政権(任期2000年2月~2007年1月)の時のような変則な形で国民党とFPOの連立政権が発足する可能性は排除できない。国民党の場合、「緑の党」やSPOとの連立より、FPOとの連立のほうが政策的に近くて政権運営が容易であることは間違いない。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年9月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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