問題はエッフェル塔を背景に「はい、ポーズ」の写真をとり、それを誰かがネットに投稿した。どのような反応が起きるか想像もしていない。こどもじみた行動です。「こんなばかばかしいことで世間をにぎわすな」と叫びたい。代表団の国会議員が女性局長を辞任した。

政治家の行動がどのように受け取られ、どんな反応が起きるかといった程度の想像力は持っていてほしい。ネット時代になってから特にそうなった。こんなことで解任など、語るに落ちる。

福島原発の処理水を「汚染水」といった農相もネット時代でなければ、言い直せばそれで済んだ。情報ネット化時代における政治家の行動、発言の仕方について、政治家は専門家から「学び直し」の指導を受けたらよい。

秋元衆議院議員(再生エネルギー議連事務局長)が風力発電の会社から3000万ー6000万円を受領していたことが発覚した贈収賄事件で、東京地検特捜部から事情聴取を受けています。馬好きで中央競馬会に馬主登録(19年)をしていたとか。国会議員が馬主登録するなんて語るに落ちる。

馬主になって共同経営の形をとり、資金提供の受け皿にしたのかもしれない。資金を提供した会社の社長が「国会質問の謝礼だ」と、特捜部に供述しているそうですから、クロでしょう。政治倫理、政治規範の基礎を学び直してほしい。嘘はいけないにしても、巧妙な嘘のつき方を練習しておかないと、中国やロシアの情報戦略にしてやられる。

政治は経済原則をもっと勉強してほしい。ガソリン価格が1㍑180ー190円に高騰し、自民党がガソリン補助金の削減を撤回し、年末まで延長する意向です。「ガソリン・ポピュリズム」と呼ばれています。

価格の高騰は原油価格の反転、円安、補助金の削減に原因があります。政治が知るべきは「価格高騰は消費を減らせ」という市場のシグナルなのです。補助金などをつけるから、計画通りに段階的撤廃をしようとすると、値上がり要因になり、継続の要求がでてくる。

ガソリン補助金を年末まで延長(累計6兆円)すれば、どうなるか。市場は「消費を減らせ」といっているのに、補助金が復活させれば、消費は減らない。減らないどころか、22年度の国内販売量は7年ぶりに増加に転じています。これが岸田首相の唱える「新しい資本主義」の一断面です。

補助金でガソリン価格を値下げして、消費を奨励するようなものだから、脱炭素にもが逆行する状況を生む。政府の介入(補助金の投入)は市場の価格形成をゆがめ、正しい消費行動をとれなくする。

政界構造では、自民党の場合、首相、閣僚などの主要ポストの8割は世襲議員によって占められている。小選挙区制になってますますその傾向が強まっている。世襲政治は地盤(後援会組織)、看板(親子代々からの知名度)、カバン(政治資金)に支えられ、小さな選挙区ほど有利になる。

政界は家内制手工業のような世界を形成している。新しい政治人材が政界に参入しにくい。民間企業でそうなったら衰退していくのに対し、政界ではますます繁盛し首相への道が開けてくる。

ここにも「学び直し」、構造変革の問題があるのに、政治ジャーナリズムは取り上げない。せっかく築いた人脈が途切れてしまうことを恐れている。岸田政権が「リスキリング」の看板を掲げた時、「政界もリスキリングを」と政治ジャーナリズムは声をあげたでしょうか。

編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2023年9月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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