ドイツのショルツ連立政権は任期4年の中間点をまもなく迎えようとしているが、同国の国民経済は昨年第4四半期から3四半期連続でマイナス成長を記録し、リセッション(景気後退)に陥っている。RTLとnTVが共同で実施した政党のトレンドバロメーターによると、大多数の国民は3党から構成されたショルツ連立政権に期待を持っていないことが判明した。国民の信頼を回復するためにも、ショルツ政権は残されて任期内に国民経済の回復を目指すことになる。

記者会見に臨む(左から)ハベック副首相兼経済相(緑の党)、ショルツ首相(SPD)、リンドナー財務相(FDP)=2023年8月30日、ブランデンブルク州メーゼベルクで ドイツ連邦政府提供

ドイツ国民経済は今年第1四半期(1~3月期)の成長率がマイナス0・1%だった。前年第4四半期の成長率マイナス0.4%に続いて、2期連続でマイナス成長を記録したことが明らかになった。2期連続、四半期の成長率がマイナスを記録すれば、「リセッション(景気後退)に陥った」と判断されるのは通常だ。そのうえ、今年第2四半期の成長率も前期比でマイナス0.2%と予測されている。

先月末、ブランデンブルク州メーゼベルクでショルツ連立政権関係者は後半の任期を控え、非公式会合を開いた。その直後の記者会見では、ショルツ首相は30日、任期後半の目標として、①マイナス成長が続く国民経済の回復、②不必要な官僚主義的なハードルを削除し、経済活動と企業の投資推進のために規制を緩和、③わが国の近代化のためにデジタル化の推進、AI(人工知能)の積極的な利用の3点を挙げている。具体的には、景気回復のために2028年までに計320億ユーロ(約5兆円)規模の税負担軽減を閣議決定している。

ドイツは日本と同様、輸出立国だ。だから、世界経済が低迷すれば、輸出もその影響を受ける。特に、中国経済の不振がドイツにとって大きい。中国はドイツにとって最大の貿易相手国だ。例えば、ドイツの主要産業、自動車製造業ではドイツ車の3分の1が中国で販売されている。2019年、フォルクスワーゲン(VW)は中国で車両の40%近くを販売し、メルセデスベンツは約70万台の乗用車を販売した。ドイツは今後、中国依存から脱皮し、輸出市場の分散化が急務となる(「輸出大国ドイツの『対中政策』の行方」2021年11月11日参考)。

ちなみに、ベアボック外相(緑の党)は、「SPD主導の過去の対ロシア、対中国政策を2度と繰り返すべきではない。その外交路線はドイツをロシア、中国に依存させる結果となり、わが国を恐喝することを可能にさせてきた」と発言している。同外相の発言は、SPD、「緑の党」、そして自由民主党(FDP)の3党からなるショルツ連立政権(信号機連合)下の外交政策で意見の相違があることを浮き彫りにしたとして注目された(「独『首相府と外務省』対中政策で対立」2023年4月21日参考)。