まず、4・5月に、各部局が次年の税制改正要望の内容を考え始めます。通常この時期に業界団体などからヒアリングを行っています。この検討はまず、各局でおこなわれます。

そして、5・6月に各部局と各局の税制改正要望を取りまとめる役割を担う部局との間で大まかな税制改正要望の検討が行われます。財務省や総務省にその税制改正の必要性を認めてもらうためには説得力のある理由が必要です。

税制改正の手続きに詳しい税制の取りまとめ部局の意見を踏まえながら、各部局が税制改正の内容とそれが必要な理由を固めるのがこの頃です。

さらに7・8月には財務省・総務省事前ヒアリングが行われます。税制改正要望を出す省庁と財務省・総務省の間で想定している要望内容の確認を行うものです。

8月末には各省庁が税制改正要望を財務省・総務省に提出します。各省庁は、それぞれの省内での調整を8月末までに終え、財務省・総務省に対して税制改正要望を行います。税制改正要望の前には8月下旬に与党の部会の場で、税制改正要望の内容に了解をもらうことになります。

8月末には、各省庁が税制改正の内容を公開します。厚労省の場合には、新規要望の場合には「新」これまでもあった要望を拡充する要望の場合には「拡」、延長を希望する要望には「延」と記載しているので、昨年度と比べて何を変えたいと思っているのかがわかるようになっています。

厚生労働省「令和5年度厚生労働省の主な税制改正要望」より

9月以降は財務省・総務省と要望を出した各省庁の交渉、自民党内の議論などが活発化します。

9月以降、財務省・総務省との交渉がなされ、何度かのヒアリングを経て、11・12月頃に行われる与党税制調査会(税制改正の方向性を決定づける自民党内の組織)での審議の前までに財務省・総務省が暫定的な査定内容を固めます。

12月には、後ほど触れる与党税制改正大綱を踏まえ、項目については与党の大綱とそろえた形で政府税制改正大綱が閣議決定されます。

1月以降、閣議決定された政府税制改正大綱の内容を踏まえた租税特別措置法改正法案が国会で議論され、3月末までに可決成立します。

以上が、税制改正の大まかな流れですが、意思決定に向けて、政策の裏側では誰がどのように動いているのか、詳しく見ていきましょう。

(この続きはこちらのnoteから)

(執筆:西川貴清、監修:千正康裕)

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編集部より:この記事は元厚生労働省、千正康裕氏(株式会社千正組代表取締役)のnote 2023年8月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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