税はインセンティブにもディスインセンティブにもなる
国の政策を実現するためのツールとしてよく使われる手段が予算です。ある目的を実現するために、人々に特定の行動を促すような資金的援助を与えて、望ましい行動をとってもらうというのがその本質です。
最近ではマイナンバーカードの取得率向上のため、マイナンバーカードの申請をした人にマイナポイントを付与する政策がありました。これは金銭的なインセンティブを与えることで、人々にマイナンバーカードの取得をさせることを目指したものです。
この予算という政策ツールを使うためには先立つものが必要です。あるべき社会を実現するために必要な予算を考え、その予算を実現するために国民から集めるものが税金です。
緊急時の対応などのために国債が発行されることはありますが、基本的には予算の増額には税金の増額がセットです。また、小さな予算事業の創設であれば他の予算を削ることで財源をねん出することも可能ですが、大きな予算を確保するためには裏付けとなる新たな財源が必要になります。したがって、大掛かりな政策変更の際には、税金についても必ず議論されます。
最近では、昨今の緊迫した国際情勢に対応するための防衛政策実現のため、防衛力整備計画において、防衛関係費を2027年時点で8.9兆円として、2022年度比で3.7兆円増額させることが示されました。
それ以降、増加する防衛費の裏づけとなる財源をどうするかの議論が活発に行われています。ニュースで断片的に報道されるものの、どの税項目からいつ、どのように、どの程度徴収するのか、といったことについては、どのようなプロセスで誰が決定しようとしているのかは、なかなか見えにくいと思います。今回は、税制改正のプロセスについて、網羅的に解説していきます。

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税制改正の行政側の流れは大まかに以下の通りです。
4・5月 各省庁が次年(2022年の4・5月であれば2023年)の税制の内容を考え始める 8月末 各省庁が次年の税制の内容を提案する「税制改正要望」を財務省・総務省に提出 9月~12月 財務省・総務省が各省の提案をヒアリングして、新たな税制とすべきか検討 12月下旬 税制改正大綱の閣議決定 1月 租税特別措置法案の国会提出 2月~3月 国会での審議 3月末 租税特別措置法成立