鈍感さは時に力になる
長きにわたり「鈍感さ」は欠点と認識されてきた。一昔前は国家機関や大企業などが大きな力を持ち、集団の中に身を置く上では長いものには巻かれろの精神で無難に立ち回ることが生存戦略として機能し、コミュニティからはみ出すことはすなわち生存を脅かすリスクという認識であった。
だが価値観が多様化し、個人が強い力を持つ「個の時代」になったことで個人の主義主張に共感する小さなコミュニティの中で生きられる時代へと変化した。小さなコミュニティでは他の人とは異なるエッヂの効いたパーソナリティに惹かれて集まってくる。
だが、忖度しないということは当然に多くの敵を作ることになる。自分の本音を出すことでそれを良しとしない一派から反発を生み出すのだ。しかし、そこでアンチからの圧力に負けて本音を引っ込めるとコミュニティ内での求心力を失うことになる。そのため周囲からの反対意見を気にせずに自分の主義主張を貫く「鈍感さ」はスキルとして認識されるように変化したと思っている。
世の中の99%に無視されたり反対されても、1%を味方につけることができれば十分生きていけるのだ。具体的な数字を出すなら、日本人は1億2000万人いるので、1%が味方になるなら120万人になる。これは潜在的な支持者としては十分すぎる数である。
周囲の意見を気にしないアンチを無視するのは簡単でも、支持してくれる人、ファンの意見を無視するのは簡単なことではない。しかし、突き抜けるためには時に支持してくれる人にも忖度せず、自分の信じる道を進む強さが求められる。
自分はYouTube動画を出しているのだが、発信スタイルをドンドン変化させている。初期の頃は10分前後の動画ばかりを出していたが、2021年から1時間、時には2時間超えの動画を出すようになり、2023年からは書籍のレビューも積極的に取り入れるようにした。
この変化に対して「どの動画も長くて見る気がせずチャンネル登録を解除しました」「前のスタイルの方がよかった」という変化したことは残念だと声をもらってきたが、自分なりの信念と戦略を優先して一部の人が離れることを受け入れてきた。しかし結果として新しいスタイルを支持してくれる人も現れたのだ。つまり、視聴者の中でも新陳代謝が起きたということである。これはあらゆるビジネスでも同じことが言える。
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映画でも漫画でも音楽でも、芸風やスタイルが変わることがある。既存のファンが去っていき、新しいファンが付くことを繰り返しながらトータルでは徐々に見てくれる人が増えていくのが理想的だろう。それにはあまり顔色を伺いすぎず、反対意見に鈍感になり自分らしさを全面に押し出す勇気が必要ではないだろうか。
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提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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