もう1つは入居する西武池袋はあまりにも古い構築物という点です。

西武池袋の建築は1952年に第1期が完成して以降、増築を繰り返し、56年頃までに8期にわたる工事で南北365メートルの「池袋の万里の長城」がほぼ完成するわけです。建物の構造を考えてもとてもじゃないけれどそれをそのまま使って新しいビジネスをしたくなるポテンシャルにはならないのです。天井も低いし、とてもじゃないですが、エレガントではありません。敢えてもう一言述べると、池袋駅の線路上は広大な空間が未利用のままです。JRが線路上開発を行えばまるで違う絵図になるでしょう。

では西口の東武百貨店はどうかといえばこちらも高齢者が多い百貨店ですが、最近はユニクロのほか、ノジマ電機やダイソーが入居し、自社売りよりも不動産リースに頼るところが大きくなっています。1Fはデザイナーズブランド店が占めるコーナーもありますが、どちらかといえば昔ながらのデパート風情が残り、ごちゃごちゃしていて安っぽいイメージが残ります。立教大生は逆立ちしても入らない店でしょう。

それでも池袋は渋谷や東京駅の高島屋とは違う文化があるのです。新宿とも違います。特に豊島区が長年作り上げたのが文化を観る、感じる、演じる、参加する街づくりです。石田衣良の「池袋ウェストゲートパーク」の舞台であるには西口公園には巨大な東京芸術劇場があり、区役所跡地のハレザ、更には南池袋公園はターミナルビルそばの憩いの公園としてユニークな立ち位置となっています。また、いうまでもなくサンシャイン通りとアニメイトを中心とした若者文化はアキバを凌駕する勢いです。9月から10月にかけて開催される神輿と東京よさこいで有名な「ふくろ祭り」は駅前を完全シャットアウトで行われます。

そういう濃い色の池袋に於いて生活文化としてはネットでも普通に手に入る商品が欲しいのではなく、その街でしか味わえないものが欲しいのです。もちろん、民間企業の事業売買なので介入できる範囲は知れています。この売買はいずれ最終決済されセブンは売却を完了するはずです。

セブンは評判を落としたと思います。セブンイレブンはともかく、セブンの経営陣の能力は結局コンビニ集団以外の何物でもなかったという言われかねないと思います。

では今日はこのぐらいで。

編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年8月29日の記事より転載させていただきました。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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