黒坂岳央です。

世の中には「行けたら行く」を始めとした「信じてはいけない言葉」がある。「準備が完全に整ったら始めようと思っている」というセリフもその一つだ。自分は過去、この言葉を使う人でただの一人も実際に始めたケースを知らない。

「そんなことをいっても、準備不足で行動すれば失敗するではないか!」と怒りの反論が聞こえてきそうだが、本稿で自分なりの見解を取り上げたい。

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永遠に準備をする人たち

まずは自分が実際に過去に何度も見てきた、「永遠に準備をし続ける人たち」を紹介したい。

自分の知人に「社員を道具としか思っていないこんな会社、さっさとやめて起業して自分らしくいきたい」という人がいる。初めてその話を聞いた時は自分は就職したてで起業など考えることがなかったため、「リスクを取るなんてすごい覚悟だ。立派だ」と尊敬の眼差しで見ていた。彼と会うたびに「今度こういう経営者の話を聞きに行って来るんだ」と起業にまつわる話を聞いていた。

数年間、そんな状態が続いたが彼は未だに起業準備中である。初めてその話を聞いた時からすでに10年以上経過している。準備期間としては少々長すぎるのではないだろうか。

この事例は「起業」についてだが、キーワードを「転職」「副業」「投資」などに置き換えれば、似たようなタイプをたくさん見てきた。「今はまだまだ準備中なので」と始めるタイミングを先送りにしている限り、永遠にその準備が整うことはないのである。

自分の場合は起業に本気で興味を持ったら、すぐに行動に移した。英会話スクールを開業したが、いきなり大きな投資はできなかったのでレンタルオフィスで時間貸しのサービスでスタートした。結果、お客さんはゼロ。大失敗したが、いきなり巨費を投じることはしなかったため、傷は小さいまま損切りできた。

また、YouTubeの挑戦をした時は編集のやり方も、カメラやマイクのセッティングも話し方も何もかもわからないことづくしだったが、何も考えずまず100個動画を出そうと決めて出していった。手探りの中、少しずつ改善を続けていつの間にか3年が経過した。準備期間などほとんどなかったが、これで良かったと思っている。

多くの挑戦をする上で「入念すぎる準備」なんていらない。今すぐに「小さく始める」が肝要である。

永遠に準備をする人たち

なぜ彼らは永遠に準備中のままなのか?それは失敗することを恐れすぎているからだ。

起業でも投資でも、はたまた何らかの学問の分野でスキルを身につけるなり、挑戦者をする限りにおいては失敗から逃れることはできない。否、失敗がまったくなくノーミスが続いているということは逆に危険信号である。なぜなら、自分の力を超える挑戦を避けている何よりの証拠だからだ。

どれだけ優秀な人でも、現時点の力量でできないことはいくらでもある。自分の力を大きく超える分野の挑戦をするなら、それはどこかのタイミングで必ず失敗することは運命付けられているのだ。

そのため、挑戦者を名乗るなら「失敗しない」というユートピアから覚めることが重要である。真に重要なことは失敗をした時にどう立ち振る舞うか?であろう。

多くの人は失敗したらその時点でゲームオーバーだと考える。確かにビデオゲームではそこでリセットとなり、最初からやり直しというイメージがある。だが、現実世界では失敗してもリセットはされず、その後も人生はずっと続いていく。だから失敗しても挑戦を終えてはいけない、もとい「終われない」。

うまくいっても、失敗しても結局続けていかなければいけないなら、短期的な結果はあまり重要ではない。長期的に見て、挑戦が成功裏に導かれるかどうか?これがすべてだ。たとえうまくいかない時は理由を分析し、改善してより良い方法でまたやり直す。これを繰り返す過程で、いつかは必ず失敗の壁を突破できるのだから、目先の失敗を恐れることは「無意味」といっていい。