BMW・M2クーペ/価格:6MT 958万円(8SATも同価格) 試乗記

純粋なドライビングを楽しむFRクーペ上陸
先代のM2は、誤解を恐れずにいえば、とてもスパルタンで、ややもすれば野蛮なスポーツモデルだった。まずは乗り心地がガツガツとして落ち着かないうえに、雨でも降ろうものならアクセルオンで後輪が簡単に流れることも珍しくなかった(トラクション・コントロールをオフにした場合)。
もっとも、これはM2に限らず、Mハイパフォーマンスモデルと称される先代のM3やM4とも共通した傾向だった。とりわけブレーキングを残したままコーナーに進入すると、その後のブレーキングオフで微妙にノーズの向きが変わってしまう癖は、個人的にどうしても馴染めなかった。


ところが、Mハイパフォーマンスモデルの足回りは、現行M3/M4のデビューとともにガラリと見直された。サスペンションが格段にしなやかにストロークするようになって乗り心地が改善。同時に路面への追随性が大幅に向上したのである。おまけに、ブレーキを残したままコーナーに入ってもハンドリングに影響が出なくなった。「史上最高のM3/M4」と評価したくなるシャシーに変身していた。
初対面した新型M2は、恐ろしく過激なスタイリングに仕上げられていることに、まず驚いた。前後のオーバーフェンダーは張り出しが強烈なだけでなく、あえて直線的で武骨なデザインにして凄みを増していた。それは長方形のエアインテークが設けられたフロントのエアダム周辺やリアバンパーについても同様。モダンなデザインなのに、どこかレトロなムードがつきまとう。新型M2は、いかにもBMWの現チーフデザイナー、ドマゴイ・ジューケッツらしい作品だ。

なお、ダッシュボード上には画面が湾曲した大型のデジタルディスプレイが鎮座する。グリップが太めのステアリングホイールと左右のステアリングリム上に赤いM1/M2ボタンが設けられている点は、従来のMハイパフォーマンスモデルそのままの文法である。