「新宿の奇祭」「新宿高層ビル街の夏フェス」「会社員のウッドストック」とも呼ばれる毎年夏恒例のイベント「新宿三井ビルディング会社対抗のど自慢大会」をご存じだろうか。コロナ禍を経て4年ぶりの開催となった今年は、8月23、24日に予選、25日に決勝が行われた。出場資格は東京・新宿三井ビルに入居する企業の社員で、約80組の出場組のなかで1~2日目の予選を勝ち抜いた20組が決勝で競うのだが、一般の会社員たちが本格的な衣装をまといアイドルグループのダンスを完コピしたり、ふんだんにコメディがちりばめられたコント仕立てになっていたり、ミュージカル仕立てのステージを展開したり、プロ顔負けの高度な歌唱を披露したり、支社長クラスの『お偉いさん』が恥ずかしい恰好で登場したりと、そのあまりにクオリティの高いパフォーマンスの数々が、一部で話題を呼んでいる。

「三井ビルのど自慢」の歴史は古い。第1回開催はビルが竣工した1974年で、今年で49年目を迎える。入居テナント企業で働く人々の交流を目的として始まったもので、それは現在も変わらないが、ビルの屋外施設「55HIROBA」で開催されることもあり、徐々にテナント企業以外の人々にも知れ渡るようになっていた。

紙吹雪はシュレッダー紙

 基本的には「内輪向け」のイベントであるため、情報は多くはないものの、過去に何度かメディアで取り上げられたことがある。たとえば2015年8月25日付「日刊SPA!」記事『会社員が全力で舞い踊る「会社対抗のど自慢大会」の熱狂 超高層ビル一棟がフェスに!?』は、現地レポートとして次のように報じている。

<劇団四季のミュージカル風があれば、損保会社の演歌を唄うイケメンの衣装は着流し、花柳糸之社中よろしく和装のバックダンサーが出てきたり、高杢の低音も忠実に再現する某大手ゼネコンによるチェッカーズ、若手男性社員がダンスから髪型まで完コピする嵐、なぜか片方に目線が入っているチャゲアス、歯科助手5人組のモノノフ、デザイン会社のモー娘。>

 また、18年8月28日付「文春オンライン」記事『会社員のウッドストック!「新宿三井ビルのど自慢2018」今年の“伝説”を振り返る』(下井草 秀)は次のように報じている。

<いつもグランデなりショートなりのオーダーを受けてくれるスターバックスの女子店員たちがミニスカ姿でAKB48の「Everyday、カチューシャ」をはつらつと歌い踊る。いつも無防備状態の自分の口の中をあれこれいじっている白衣の歯科助手たちが浴衣に着替えZONEの「secret base ~君がくれたもの~」をしっとりと歌い上げる。怪盗三姉妹をヒロインとしたアニメの主題歌「CAT’S EYE」をレオタードに身を包んで熱唱するのは、よりにもよってお金を守る立場の三井住友銀行の行員たち。最高としか言いようがない>

<圧巻だったのは、三井不動産リフォームの女子社員によるキャンディーズ。顔もスタイルもパフォーマンスもそんじょそこらのアイドルに勝るとも劣らない3人組OLが、赤いドレスをまとい、レースをあしらった猫耳を頭につけて「ハートのエースが出てこない」を歌い踊る。本当に、これ以上の眼福がこの世に存在するのかと問いたい>

 このほかにも、18年9月3日付「ねとらぼ」記事『なぜ「新宿の夏フェス」がこんなにアツいのか? 「新宿三井ビルのど自慢」の魅力とは』は現場の熱気を次のように伝えている。

<三井ビルのど自慢にはなくてはならないもの。それは「紙吹雪」です。この紙吹雪は各企業から出たシュレッダーごみをポリ袋に入れて持ち込んだもので、ステージ上で歌が始まると投げかけられます。投げかけるというよりはぶちまけられている、かけられている、という感じの方がぴったりくるかもしれません。正直「雪……かな?」と錯覚するレベルでステージ上にまかれる紙吹雪が、実はオフィスから出たものである、という意味では地産地消とも言えるのではないかと。なお、この紙吹雪は1組終わるごとに片付けし、また再利用するという流れになっています>