カバーディスプレイが拡大、初代iPhoneと同サイズに

2機種とも、折りたたみスマホ最大の特徴と言えるヒンジを刷新していますが、そのうえでさらに大幅な進化を遂げたのが、縦折り型のGalaxy Z Flip5です。

このモデルは、いわゆるガラケーのように折りたためるのが特徴です。閉じたままでも、通知などの各種情報をチェックできるよう、カバーディスプレイが搭載されていますが、このサイズが一気に3.4インチまで拡大しました。

前モデルは、カバーディスプレイが1.9インチだったため、面積にして1.8倍弱になっています。

スマホも額縁を細くするなどして、ディスプレイサイズが大型化することはありますが、この場合、0.1インチ刻みでの改善が一般的。本体サイズそのままで、ディスプレイの面積だけが一気に倍増近くすることはほぼありません。それを踏まえると、Galaxy Z Flip5の進化がいかに大きいことが分かるはずです。

3.4インチと言えば、初代iPhoneと同サイズ。これによって、閉じたままでも必要な情報を見やすくなりました。

Galaxy Z Flip5は、折りたたんだときのカバーディスプレイが3.4インチまで拡大した


開閉できるのが特徴の折りたたみ型スマホを閉じたまま使えるというのは、逆説的にも聞こえますが、Galaxy Z Flip5であれば、あえて本体を開く回数は減ってしまいそうです。ブラウジングや動画視聴など、本当に必要なときだけ本体を開けばいいからです。

折りたたんでコンパクトな状態で持ち運び、そのままカバーディスプレイをチェックして再びポケットやカバンにしまうといったことも増えるでしょう。

また、試験的な機能を試せる「ラボ」という設定を有効にすると、カバーディスプレイにそのままアプリを表示することもできます。たとえばPayPayで相手にバーコードやQRコードを見せるだけといったような場合なら、あえて本体を開く必要はないでしょう。移動中にマップを確認することもできます。

3.4インチにカバーディスプレイが拡大したことで、Galaxy Z Flip5は従来モデルと使い方が変わる可能性も出てきたと言えそうです。

試験的な機能という位置づけだが、ユーザーが有効にすると、カバーディスプレイにそのままアプリを表示させることができる

注目増す“折りたたみスマホ”、日本では縦折りが人気?

サムスン電子がここまでGalaxy Z Flip5に注力しているのは、折りたたみスマホが主流になれそうなほど、勢いが拡大しているからです。

昨年時点で全世界の出荷台数が1000万台を超えていた折りたたみスマホですが、27年ごろには1億台を突破するという予想も打ち出されています。なかでも有利なのが、この分野で先行しているサムスン電子。実際、グーグルや中国メーカー各社が続々と折りたたみスマホを投入しているなか、7割以上のシェアを同社が占めているといいます。

折りたたみスマホには横折りで開くとタブレットサイズに近くなるGalaxy Z Fold5のような端末もありますが、どちらかと言えば、現在ヒットしているのはGalaxy Z Flip5のような縦折りタイプ。

サムスン電子によると、日本では7割弱が縦折りのGalaxy Z Flipタイプを選択するといい、折りたたみ型の主流になりつつあります。横折り型に比べ、価格が一般的なハイエンドスマホに近いのも、ユーザーに受け入れられている理由と言えるでしょう。

モトローラも、縦折りスマホを8月25日に発売した


世界的にもこの傾向は同じです。日本では、モトローラが「motorola razr 40 Ultra」を発売するなど、ライバルも増えてきました。競争が激しいからこそ、Galaxy Z Flipは大幅なフルモデルチェンジを果たしたというわけです。

ただし、日本はもちろん、世界でも出荷台数を稼げるのは価格のこなれたミッドレンジモデル。今のラインナップのままでは、折りたたみモデルも頭打ちになる可能性はあります。海外では10万を下回る折りたたみスマホも登場しており、この分野の価格競争も今後は激化することになりそうです。

(文・石野純也)