ロシア問題専門家のインスブルク大学のゲルハルト・ゴッドマン教授は23日、オーストリア国営放送(ORF)の夜のニュース番組で、「反乱後、プーチン氏はプリゴジン氏を国家の裏切り者と最大級の批判をしたが、具体的には何もしなかった。プリゴジン氏が反乱後も自由に活動を継続している姿を目撃し、クレムリンのエリートたちの間で『プーチン氏は弱い』といった囁きが聞かれた。プーチン氏は弱さを見せるわけにはいかない。自身が弱くないことを誇示するためにもプリゴジン氏を処罰する必要があったはずだ」と説明。
プーチン氏ではなく、別の人物がプリゴジン氏の殺害を命令したのではないか、という情報について、教授は、「確かに、クレムリンの中にはそのような強硬派の指導者もいるが、プリゴジン氏の殺害はプーチン氏抜きでは考えられない。プーチン氏は過去、国家に対して裏切った者を絶対に許さないし、忘れることもないと強調した。プリゴジン氏のジェット機墜落が24時間反乱からちょうど2カ月目だったこと、機内にはワグネルの指導者も乗っていたことなどを考えると、プリゴジン氏のジェット機墜落はプーチン氏の計算された工作と考えざるを得ない」と解説した。
同教授はまた、「ロシア国民もプリゴジン氏の死を歓迎しているだろう。ロシア国営メディアは過去2カ月間、プリゴジン氏が犯罪者であり、オリガルヒ(ロシアの新興財閥)で腐敗した人間であると連日報じてきた。だから、プーチン大統領がそのような犯罪者を処罰したと受け取っているわけだ」という。
プリゴジン氏を失った「ワグネル」が存続できるかは不明だが、プーチン氏はプリゴジン氏の死を通じて、クレムリンのエリートたちと国民に向かって、「自分は言行一致の強い指導者である」と誇示したことになる。
なお、プリゴジン反乱後、元軍事情報官でドネツク人民共和国国防相に一時期就任したとがある超ナショナリストのイゴリ・ギルキン氏(52、別名ストレルコフ)が7月21日、「過激主義を扇動した」という理由で拘束された。ギルキン氏はクレムリンのウクライナ戦争が「生ぬるい」としてロシア軍、そして軍の最高司令官でもあるプーチン大統領を批判してきた人物だ。今月22日には、プリコジン氏の反乱を事前に知っていたといわれるスロビキン上級大将が航空宇宙軍総司令官を解任されている。スロビキン氏は連邦保安局(FSB)の取り調べを受けている。そして今回、反乱の本丸、プリゴジン氏自身がプーチン氏の報復の的となった、というわけだ。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年8月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
【関連記事】
・「お金くばりおじさん」を批判する「何もしないおじさん」
・大人の発達障害検査をしに行った時の話
・反原発国はオーストリアに続け?
・SNSが「凶器」となった歴史:『炎上するバカさせるバカ』
・強迫的に縁起をかついではいませんか?