しかし、多国間の枠組みである国連が機能不全であるように、「東アジアサミット」のような多国間の枠組では日本を守る安全保障上の有効な合意形成は極めて困難であり、その実効性も不確実である。米国との安保条約を廃棄し、その代わりにこのような枠組みに1億2000万人の日本国民の命を託すことはできない。「反戦」「反米」の共産党はこのような枠組みを意図的に過大評価しているのである。

国家の義務は、他国の侵略から国民を守ることであり、この義務は最終的には軍事力によって担保される(アダム・スミス著「国富論」上149和44年河出書房新社)。防衛力を持たない平和外交一辺倒が他国の侵略を誘発し極めて危険であるのは今も昔も同じである。

今回のロシアによるウクライナ侵略も、ウクライナの核兵器放棄が重大な誘因になった。1994年の「ブタペスト覚書」の米側の当事者クリントン元米大統領は、「ウクライナが現在も核兵器を保持していれば、ロシアが侵攻することはなかった」との認識を示し、「放棄を促したことを後悔している」(2023年4月6日共同通信)と述べた。示唆に富む極めて重大な発言であり、日本も教訓とすべきである。

中国共産党は毛沢東政権以来力の信奉者である。相手国の力が強ければ攻めず、弱ければ攻める。その意味で、今回の岸田政権による日本の防衛力の抜本的強化は、尖閣諸島を含め対中国の抑止力向上に極めて有効である。

「岸田大軍拡は戦争への道」「日本を新たな戦前にするな」「戦争の準備ではなく平和の準備を」などと宣伝し、防衛力強化に絶対反対する共産党の主張は、力を信奉する専制主義国家の中国や北朝鮮、ロシアを喜ばせるだけである。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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