WeWorkの事務所に行くと絵に描いたような30代前後の若者がノートパソコン一つで仕事をしています。座る場所も毎回違うし、広い共有エリアでは飲み物やポップコーンが無償で配られます(かつてはビールまで無料でした)。「格好いい」これがぴったりくるのです。

しかし、一人でする仕事の規模は知れています。せいぜい生活費に見合う給与が出る程度でしょう。ここがシェアオフィスの見誤った点です。そもそもは一人オフィスではなく、同じ会社の人たちが家から近いWeWorkで働き、オンラインで繋がるという発想を育むべきでした。ですが、実際にはそうならなかったわけです。

私が入居する英国IWGグループのリージャスというシェアオフィスはそういう派手さはほとんどなく、ごく普通の個室がずらりと並ぶタイプです。最近、入居者が若干増えていますが、一つのオフィスに数人入り、作業しているところが多いこと、個室の中は見えないため、会社の書類や貴重品を置いておいても一応大丈夫です。WeWorkとはそのあたりのコンセプトが違ったわけです。

つまり、ファッション感覚での仕事を目指したWeWorkに対してIWGは仕事の環境をきちんと考えた、その違いが出たと思います。

ところで中国の不動産も戦々恐々ですが、北米の事務所用不動産も目も当てられない状況には変わりなく、かろうじて見えないふりをしていますが、こちらも秋にトラブルが再燃する公算はあり得ます。

俯瞰すると、コロナで働き方が変わったのは良いけれど今後、何処でどう働くのか、会社によりバラバラで未だに出社か在宅か、ハイブリッドか、世の中に統一された見解がないことが混迷の理由でしょう。またハイブリッドの場合、月曜日と金曜日は出社しない人が多いというのが当たり前のトレンドになっています。業務は従業員の都合ではないという点を踏まえれば組織をどう支えていくのだろう、という不思議感は経営者の私もいつも疑問に思っている点です。

働き方改革とは言いますが、結局、何をどうしたらよいのか、経営側も従業員側もよくわからないのでしょう。私は古典的な出社主義ですし、私が関与している事業はほぼ出社を貫いています。現場にリモートはない訳で結局我々は普通に会社に行くわけですが、逆に行くな、と言われると落ち着かなくなるのは私も古い昭和のスタイルがこびりついているということなのでしょう。

では今日はこのぐらいで。

編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年8月24日の記事より転載させていただきました。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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