マーケットウォッチャーが注目するのが24日から始まるジャクソンホールでの金融会合。特にパウエル議長の講演が25日に予定されているため、そこまでは動きづらいというのが市場関係者の共通した意見です。個人的にはジャクソンホール会議が8月という金融ニュースの閑散期に開催されることや9月の新学期入りを前に秋の相場を占う的なお祭り行事に仕立て上げられてるという認識です。
そもそもジャクソンホールでの会議とはもっと学術的な分野を議論する機会で日々のマーケットの動向を受けた金融政策の会議ではありません。ただ、市場はその短いであろうパウエル議長の発言の一言ひとことをつぶさに分析し、ヒントを得ようとするわけです。

パウエル議長FRB ツイッターより
お前はどう見ているのか、と言われれば「インフレ率が2%の目標から引き続き乖離していることを鑑み、FRBは各月の物価動向や雇用情勢を見ながら引き締めのスタンスを維持していく」という表現以外思いつきません。アメリカの10年物国債の利回りは8月22日の時点で4.36%までつけ、連日の高値となっていますが、これで一旦落ち着くだろうとみています。つまり、引き締めスタンスはさらなる利上げをする意味ではなく、現状の金利水準を維持し、インフレの鎮静化を待つことだと市場が確認できればこれ以上の国債利回りの上昇には材料不足ということになります。
但し、アメリカの実体経済が弱含むと見込まれる中、思惑的な動きがないとも言えません。その一つが大量にアメリカ国債を持つ中国が自国経済の不振とアメリカ経済の長期的な不安感、冷えた米中関係を背景に国債持ち高を減らす可能性はあります。売れば国債安=利回り上昇となります。
私はむしろ植田日銀総裁がどう出るか、そこに注目しています。22日に岸田首相と会談していますが、ジャクソンホールに向け若干の報告をしたものと思われます。日本の国債市場は22日に0.665%をつけ、以前までの0.5%の上限は過去のものとなり、いわゆるグレーゾーンの0.5%-1.0%のレンジに入ってきています。YCCはより形骸化したものになるはずで、今年の終わりぐらいまでにはYCCは撤廃できる下地は出来るのではないかとみています。
日米金利差が大きい現在、円ドルの為替相場はドル高に動きますが、仮に日本の金利に上昇バイアスがかかったとしても思ったほど円高になりづらくなってきた気もします。理由は地政学的リスクで日本が中国へとの貿易関係が密接である中で中国のバーゲニングバワーが落ちてくれば当然、日本経済にはマイナスと見られます。また、日中間の政治的問題の壁がより高くなってきていることもあります。端的な例が原発処理水の海洋放出を巡り、中国が日本の魚の全量チェックをするとしたことで日本産の中国向け水産物の輸出が7月は前年同月比54%減になっています。これなどは福島の魚云々ではなく、日本の漁業全部に影響するわけです。