大統領選後の言動が裏目に

大統領選前のトランプ自身の立ち振る舞いもそうだが、現在の彼の訴訟まみれ状態に直結したのが、彼の選挙後の言動だった。大統領選での敗北が認められなかったトランプ氏は、組織的に大統領選の結果を不当にも覆そうと目論んだ。その計画が災いし、ジョージア州と連邦レベルで二つの刑事訴追を受ける羽目になっている。

また、機密文書をめぐる刑事訴追もトランプ氏の自業自得の結果である。トランプ氏は一年近くにわたり公文書館から自身の邸宅に持ち帰った機密文書の引き渡しを要請されていた。その間に機密文書を返還していれば罪にはなっていなかったものの、トランプ氏はそれらの文書の引き渡しを拒否するだけではなく、全ての文書を返したとの虚偽の回答を当局にしている。

トランプ氏の弁明としては、大統領権限で機密文書が全て機密解除されていたとしているが、録音された音声によりトランプ自身が機密解除されていない文書を保持していたことを認めており、且つその文書をジャーナリストに見せびらかしていたことが明らかになっている。

果たして、トランプ氏が機密文書を頑なに手放さなかった理由が、彼の虚栄心を満たすためだったのか、それともその他の理由が関係していたかどうかは来年に予定されている裁判によって全容が明らかにされていくであろう。

トランプは勝ちたいのか?

トランプ氏が良き敗者であることを選択していれば、彼は容疑者になることもなく、今よりもさらに強い政治的立場にいることが出来たであろ。そうなれば、今のような競争的な予備選も戦う必要もなく、共和党は挙党一致でトランプ氏で2024年大統領選を戦うと即決したであろう。

また、トランプ政権時代に米国経済が絶好調だったことを鑑みると、物価が高騰し、不況が訪れるかもしれないとされる今の経済状況は自分の最大の強みであった経済をアピールするのにこれ以上ない状況である。しかし、有罪になるリスクがあるゆえに、選挙の結果を左右する無党派層はトランプ氏を投票先として忌避する傾向を示しており、経済面でのトランプ氏の功績が相対的に矮小化されてしまっている。肝心の共和党支持者でさえもトランプの有罪が確定した場合、45%が彼に投票しないと答えている。

何よりも、トランプ氏自身が大統領になってどうするかを主張するよりも、いかに選挙が「盗まれた」かを熱心に説いている場面の方が目立ってしまっている。ジョージア州でいかに選挙不正が行われたかという信ぴょう性のかけらも無い報告書をトランプ陣営が発表しようしていることがその証左である。

トランプ氏は自分自身の言動や決断により、自分の再選の可能性を遠ざけてしまっており、彼がそれに気づく気配も無い。その点ではトランプ氏の再選を阻む最大の敵はトランプ自身であることが言えよう。

 

 

 

 

 

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

【関連記事】
「お金くばりおじさん」を批判する「何もしないおじさん」
大人の発達障害検査をしに行った時の話
反原発国はオーストリアに続け?
SNSが「凶器」となった歴史:『炎上するバカさせるバカ』
強迫的に縁起をかついではいませんか?