徹底した「挑戦」で、高級車のヒエラルキーを打破!
世界の自動車メーカーが挑戦するも、未だ成功に至らないジャンルがある。それが「小さな高級車」だ。これまで登場してきたモデルはコンパクトな実用車に豪華な装備……といったクルマばかり。「見た目」は高級車でも、本質的な部分まで高級な本物はなかった。
今回、そこにレクサスが真っ向から挑戦した。イタリア・ミラノで世界初公開されたLBXである。LBXに与えられたミッションは高級車の「ヒエラルキー」を変えること。つまり、「高級車=権威の象徴」からの脱却を意味している。車名はLexus Breakthrough X(cross)-overの略。開発のキッカケはブランドホルダー、豊田章男氏の「本物を知る人が素の自分に戻れ、気負いなく乗れる高級車を作りたい」という強い想いだったという。
開発陣はヤリスクロスの基本コンポーネントをベースに提案を行うが、豊田氏は「この程度のモデルしかできないのなら、要らない」と一喝。いきなりプロジェクト終了の危機に陥った。トヨタのエンジニアは「与えられた素材で全力を尽くす」仕事は得意。だが、豊田氏は「高級車のヒエラルキーを変えるためには、「リファイン」ではなく「挑戦」をしなければダメ」という覚悟を伝えたかったのだ。
LBXのチーフエンジニア、遠藤邦彦氏は、「デザイン統括のサイモン・ハンフリーズと話をすると『プロポーションのいいクルマを作るには、ちゃんとしたパッケージじゃないとダメだね』と。その後、佐藤プレジデント(現社長)に相談をすると、『いばらの道かもしれないけれど、行こう』と背中を押してくれたので、『思い切ってやりたいことをやる!!』と決心しました」と語る。
機能を凝縮した主張あるデザイン。パッケージングは前席優先のパーソナル志向
LBXは、実質的にゼロから理想像を追求した初めての小さな高級車である。エクステリアは凝縮感が印象的だ。全長×全幅×全高4190×1825×1560mmのコンパクトサイズながら強い存在感を受ける。フロントは「ユニファイドスピンドル」と呼ばれるフード造形とシームレスグリルが個性を主張。前後オーバーハングが短いサイドビューは、大径タイヤ(17/18インチ)と相まって独特の安定感を生み出す。リアは新世代レクサスのアイコンでもあるLシェイプの一文字シグネチャーが目を射る。ドシッと踏ん張りのあるスタンスは、日本の伝統の「鏡餅」がモチーフだそうだ。
インテリアの造形とイメージもLBX専用。最新レクサス共通の「TAZUNAコクピット」の概念を踏襲したうえで、新しさに挑戦した。具体的には横基調のスッキリしたインパネ上面を持ったモニターがコンソールに溶け込むデザインである。12.3インチのフル液晶メーター、9.8インチタッチディスプレイのデザインを含め、個人的には新世代レクサスの中で最も自然かつ整ったレイアウトだと感じた。ドアのアンラッチ機能には、NXから採用がスタートした電気制御が可能なeラッチシステムを設定する。
シートポジションもこだわりのひとつ。ヤリスクロスに対してヒップポイントを15mm低め、それに合わせてステアリング/アクセル/ブレーキの角度をLBX専用に調整した。車両の挙動を感じやすく正確な運転操作ができるシート性能にもこだわっている。実際に座ってみたが、クロスオーバーというよりハッチバックに近い着座感だった。リアシート/ラゲッジは必要十分といったスペースだが、LBXのキャラクターは基本的に前席優先。デメリットにはならないはずだ。
基本のインテリアコーディネートは5種。クール/リラックス/エレガント/アクティブ/アーバンという世界観を設定。そして各部の表皮色/シートベルト/ステッチ/配置構成/トリム加飾を自由に選べる「Bespoke Build」が用意される。これは、なんと約33万通りの組み合わせが可能なオーダーメイドシステム。豊田会長からのアドバイス「最後の最後にLBXを仕上げるのは、お客様」の具体化だそうだ。LBXが真のプレミアムであることの証明のひとつである。