脱炭素社会の実現にむけた取組み
ーーその目標を実現する製品がスマートリモコン『Nature Remo』シリーズですね。
Nature Remoシリーズ4モデル
塩出:これから再生可能エネルギーによる発電が主流になり、電力システム自体がアップデートされていきます。その時に、電力を利用する需要側の制御がとても重要になります。その制御のための仕組みを作ろうとスマートリモコンを製品化しました。
ーーユーザーの利便性を高めるためだけの製品ではないのですね。
塩出:もちろん、ユーザーに便利で快適な体験をしてもらってNature Remoを使い続けてもらうことは重要です。ただ、それに限らず、環境によいことを同時に実現していくことを目指しています。Nature Remoが普及すると、電力の需要を最適にコントロールして、(電力消費の)ピークをカットする仕組みを作ることができます。
ーー背景をくわしく教えていただけますか?
塩出:日本は2050年までに温室効果ガス(※)の排出を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」を目指すことを宣言しています。カーボンニュートラルを実現して、温室効果ガスによる環境破壊を抑制しないと、深刻な自然災害が発生して、人間が住めない環境になる。カーボンニュートラルを実現するためには2030年までに温室効果ガスの排出量を半減させる必要があります。
温室効果ガスとは
温室効果ガスには、水蒸気、二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、フロンなどが該当します。大気中の濃度が増し、地表から放射される赤外線の一部を吸収することで温室効果をもたらします。地球温暖化の原因とされています。
Nature Remoは課題解決のための手段
ーー電力の需要をコントロールするとはどんなことでしょうか?
塩出:太陽光と風力での発電は、天候などの影響で発電量が安定せず、変動性があります。電力需給バランスの調整のために、電力供給状況に応じて需要側が電気の使い方を変化させる「デマンドレスポンス」という方法で電力需要を抑制する必要があります。
Nature Remoを使うと、条件を設定して、自動で家電の制御を行い、節電をする事ができる。つまり、自動で電力需要をコントロールして、快適な体験をしながら、環境に良いことを同時に実現していくということです。
ーー環境のためにNature Remoを普及させる必要がある一方、スマートフォンやスマートスピーカーなどのデバイスで自宅をスマートホーム化することは、シニアやミドル層が積極的に取り入れることにハードルがあるのでは?そういったギャップ解消には取り組まれていますか?
塩出:実はスマートフォンを利用したスマートホームや、スマートスピーカーのユーザーはミドル層が中心です。弊社のクライアントも、30代から50代の方がとても多い。今、Nature Remoを使ってくださっているお客さんは、この製品にどんな利便性があるか、どんなことができるかをご自身で想像できる方々です。
若い世代やシニアにもNature Remoを普及すると、より多くの電力需要を抑えることにも繋がり、ミッションの達成に近づいていくと思っています。だから、より多くの人に届けていきたいと考えています。ただ便利なガジェットだというだけではなく、明確な課題解決のための手段だということが認知される必要があります。
ーー人びとが課題を自分のこととしてとらえる必要もありますね。
塩出:「エネルギーマネジメント」だとちょっとややこしく感じられちゃうかもしれない。電気料金が高騰しているなかで節電・節約ができるデバイスとして、課題解決にもつながっていくことを知ってもらうことは大切ですね。
もうひとつ、先日、多くの人が手に取りやすい価格帯のエントリーモデルとしてNature Remo nanoを発売しました。
ーーさらに、既存の製品も6月1日に値下げされました。
塩出:Nature Remoの累計出荷数が60万台、日本の世帯数は5570万です。Wi-Fiの導入率などを考えても、少なくとも数千万台は普及させることができるマーケットだと考えています。
スマート家電はオンボーディング、つまり最初のセットアップでつまずいてしまう方が市場全体でも多い傾向があります。Nature Remoは、ユーザーの使いやすさを第一に開発をしていて、これまで販売しているモデルでも、アプリのガイドに沿って簡単にセットアップができ、導入のしやすさには一定の評価を頂いています。
7月に発売したNature Remo nanoは、スマートホームの共通規格Matter(※)に対応しています。Matterに対応した製品同士は簡単に連携ができ、これまで以上にスマートリモコンを含む、スマートホームの導入が増えていくと期待しています。
Matterとは
スマートホームのためのIoT共通規格のこと(IoTとはモノがインターネットに接続する仕組み)。Apple、Google、AmazonなどアメリカのIT企業280社以上が参加する無線通信規格標準化団体(Connectivity Standards Alliance)が策定しました。スマートホーム規格が各社共通になることで、異なるメーカーのスマート家電が相互に連携できるようになります。
Nature Remo nanoも赤外線方式のリモコンを備えた家電をスマートデバイスから操作可能
ーー実際に試してみて、オートメーション(※)の設定を最適なものにすることにちょっと難しさを感じました。それから、賃貸物件に住んでいると、照明器具がリモコン対応していなかったり、住まいのスペックにも影響されるように思います。
オートメーションとは
Nature Remoの機能のひとつ。時間や位置情報、上位モデルでは温度、湿度、照度、人感など搭載センサーが読み取った情報をトリガーとして条件設定し、家電を自動操作する仕組み。たとえば「朝7時に、照明をつける」「室温が28度を越えたら、エアコンをつける」などユーザーが自由に設定できる。
塩出:オートメーションはNature Remoを導入するメリットのなかでも大きなポイントになるため、基本的には項目に従って選択していけば簡単に設定できるように開発をしています。
オートメーションのレシピはWebサイトで公開しているので、工夫が必要なオートメーションを設定したい場合は参考にして頂きたいと思っています。例えば、僕の家もリモコン対応していない照明なんですが、赤外線に対応したスイッチを取り付けてNature Remoで操作しています。
これからは、ユーザーの利用履歴を元に個々のユーザーの生活に合ったオートメーションを提案し、ユーザーはそれを承諾するだけで簡単に導入ができる、といったようにユーザビリティを上げていければと考えています。
8月24日(木)18時30分に公開する予定のインタビュー後編では、塩出さんに環境問題を他人事にしないためのアクションや、これから‟一歩を踏みだそう”とする若い人たちへのアドバイスをご自身の経験からうかがいました。