Nature株式会社が開発・販売するスマートリモコン『Nature Remo』。赤外線リモコンを備えた家電であれば、メーカーや型番・年式などに関係なく、スマートフォン上のアプリで操作ができ、手軽に "スマートホーム”を実現できる製品です。
2014年、ボストンで同社を起業した塩出晴海さんは、この製品を普及させることでクリーンエネルギーで満たされた社会を実現し、自然と共生した社会を創ることを目標としています。
創業者の塩出さんにうかがったお話を、前後編に分けてお伝えします。前編ではスマートリモコン『Nature Remo』や、クリーンエネルギーについて教えていただきました。
(本記事は前編、後編は8月24日(木)18時30分に公開予定です)
自然と共生し、クリーンなエネルギーで満ちた世界を
ーーNature株式会社を起業されたきっかけについて教えてください。
塩出:起業自体は父が同じく起業家で、3人くらいの小さなチームでプレイステーションのゲーム開発をしているのを見て、子どもの頃から考えていました。自然との共生をテーマに考えるようになったきっかけは就職が決まったころに、父から「大学院を早く卒業して、ヨットで一緒に広島から沖縄に行かないか」と誘われたことです。
当時は大学院2年生で、スウェーデンにいたんですが、冬休みを返上して論文を仕上げ卒業を3ヶ月繰り上げて帰国、父と3ヶ月間の洋上生活を送りました。この生活で感じた「自然との一体感」、これこそが本来人に必要な感覚だ、自然と共生した社会を取り戻すべきだと考えるようになったきっかけです。
ーーその想いとはどんなものでしょうか?
塩出:人間も大自然にさらされて生きる動物で、自然のなかにいることを心地よく感じるように遺伝子レベルで組み込まれていると感じました。ヨットは風の力だけで進むんです。夕暮れに、ほどよく一定のスピードで風が吹き続けていました。夕陽が穏やかな海をやわらかく照らすなかで、ヨットが風に呼応するように進んでいくんです。この時、めちゃくちゃ気持ちよかったんです。あの高揚感は、僕の人生でもっとも濃い自然の体験でした。
ーー「自然との共生をドライブする」というミッション(企業の存在意義、果たすべき使命)を掲げるきっかけとなったんですね。
塩出:洋上生活を終えて、就職した三井物産株式会社で働くなかで、僕の生涯をかけるべきテーマ「自然xテクノロジー」、クリーンテックにたどりつきました。海外でクリーンエネルギー事業を模索していた同社の電力事業部へ異動を希望したのですが、石炭火力発電の担当となり、石炭火力発電所や石炭鉱を訪問するたびに、違和感がありましたね。
発電所の建設には自然破壊がともない、命を危険にさらすような恐ろしい事故が起こることもあります。快適な暮らしのためとはいえ、「ここから脱して自然と共生できる方法はないだろうか?」と考えるようになり、「クリーンなエネルギーで満ちた世界を実現したい」という目標が生まれました。