経営陣が特異性やセールスポイントを理解していない?
一方、近年のPayPayは本来のサービスとしてのよさを活かしきれていない戦略が続いているという。
「PayPayのよさは、チャージするだけで決済ができるシンプルな決済手段、それ自体にありました。クレジットカードほど多機能ではないけど、現金を出すよりも手軽に使えるユニークな決済手段として人々のニーズを獲得したという経緯があり、人気を博したんです。にもかかわらず、現在のPayPayはそうしたシンプルさ、扱いやすさから外れた方向性へとズレていっています。たとえば、『ソフトバンク・ワイモバイルまとめて支払い』の変更は代表的。PayPayでは、現金のチャージ手段としてクレジットカードやセブン銀行ATM、ローソン銀行ATMへの入金、銀行口座のほかに『ソフトバンク・ワイモバイルまとめて支払い』というチャージ手段があります。ソフトバンク、ワイモバイルユーザーなら月々の携帯料金と一緒にチャージ金額を請求することができ、両ユーザーからすれば、かなり便利な機能でした。このサービス、従来は何回チャージしても手数料がかからなかったのですが、9月1日からは毎月2回目以降のチャージに、2.5%(税込)の手数料がかかるようになることが発表されています。
また25年1月からは、PayPayに登録できるクレジットカードが、自社ブランドである『PayPayカード』『PayPayカード ゴールド』のみになります。ちなみにそれまで利用できた他社のクレジットカードはすべて利用停止。この2つの変更は、発表当初は23年8月1日からの変更とアナウンスしていたのですが、想定以上に反発が大きかったためか、それぞれ延期されたという経緯もあります」(同)
そして、今後の戦略によっては、加盟店数、ユーザー数が減少する可能性も少なからずあるとのこと。国内のキャッシュレス化の普及後退の懸念もあるが、果たしてどうなるのか。
「今のPayPayの戦略を見ていると、経営陣がPayPayならではの特異性やセールスポイントを理解しているとはとても思えません。PayPayの親会社であるソフトバンクやヤフーは、PayPayを早く上場させ、さらなる売上を見込もうと躍起になっており、従来の使いやすいPayPayの良さを無視した戦略に舵を切っている印象です。手数料や登録クレジットカードの制限などは、そうした上場戦略の一環でしょう。
マイナポイントの存在も経営陣に焦りを与えている要因になっているのかもしれません。『Suica』『majica』などマイナポイントをお得に貯められる決済サービスは増えており、PayPayの牙城を崩す存在として懸念しているのではないでしょうか」(同)
とはいえ、岩田氏いわく「PayPayの改悪が進むからといってすぐにキャッシュレス化が後退するわけではない」とのこと。
「PayPayは依然としてユーザー数、加盟店数は国内随一の規模であり、すぐに立場が脅かされることはないでしょう。そのほかのキャッシュレス決済サービスもニーズや客層を上手くつかみ取り、成長を続けていますから、今後劇的にキャッシュレス人口が減少することも考えづらいです。個人的には、PayPayの経営陣には目先の利益にとらわれず、原点である現金とクレジットカードの中間であるというシンプルな立ち位置を貫いてもらいたいと考えています。そうすれば、今後の利用者数維持、もしくは増加へとつなげることができると確信しています」(同)
(取材・文=文月/A4studio、岩田昭男/消費生活ジャーナリスト)
提供元・Business Journal
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