カメラを向けられることのない人々の姿を描き続けていきたい
――本作は北米での配給も決定しているそうですが、監督的にはどういう層に向けた作品になっていると思いますか。
宇賀那:海外の人と日本人では作品の受け止め方も違うと思うんですけど、トカナを読んでる方々に向けて言うのであれば、やっぱりホラー好きな人に見てほしいですね。
昨今、ホラー映画もだんだん新しいフェーズに入ってきているというか。最近だとA24制作の『Pearl パール』がそうですけど、わりと現代的でメッセージ性が強くて、ホラーに留まらずジャンルを越境してくような作品が増えてきているような気がするんですよね。
『Love Will Tear Us Apart』もそういう作品に仕上がっていると思うので、もちろん幅広い層に見ていただきたいっていう思いはあるんですけど、ホラー映画が大好きな方にも、新しいホラー像を提示できるような作品になっていると思うので、ぜひ気にしていただけたら嬉しいです。
――たしかに、ホラー映画なのに陰鬱な感じではなく、作品全体を通してピュアな夏の雰囲気が漂っていますよね。
宇賀那:そうですね。撮影したのも夏ですし、新作のジャパニーズスラッシャームービーってなかなか珍しいので、そういう面でも注目していただけたらと思います。

――殺人シーンの音も印象的で、爽快感のあるシーンでもあるので、私はこの作品をASMR感があるなと思いながら拝見させていただきました。演出面でもそういった細かい部分にこだわりを感じたのですがいかがでしょうか。
宇賀那:音響はジブリ作品を手掛けているような方に監修をお願いしているので、結構重層的に入っていて、常に新しい音が鳴ってる感じはありますね。音楽もこだわっていて、実は手数が多い作品なんですよ。個人的にも音の演出で遊ぶのがすごく好きなので、今回はとても満足しています。
――わりと現代社会に対するアンチテーゼじゃないですけど、冒頭で仰っていた愛の形は千差万別であるべきというのが本作に込められたメッセージということになるのでしょうか。
宇賀那:超純愛映画を作りたいっていうのがシンプルな動機ですね。ただ、その純愛の形は人それぞれなので、その多様性を描いてみたかったんですよね。
やたら多様性を主張するわりに、まったく寛容さを感じない社会に対して違和感があったので、最初からアンチテーゼになるような作品を作ろうと思っていたわけじゃなくて、突き詰めた結果、世間に反発するような作品に仕上がったっていうのが強いかもしれません。
――今後も続々と監督作品が公開を控えていらっしゃるんですよね。
宇賀那:それこそジャンルはバラバラなんですけど、今4本ぐらい公開待機作品があって、実は今週も新しい映画がクランクインするんですよ。なんか重なっちゃってるんですよね。
――精力的に作品を発表するなかで、特にジャンルレスで活躍される宇賀那監督のスタイルや主軸の部分っていうのはご自身のなかでどのあたりに置かれていますか。
宇賀那:ふたつあるんですけど、ひとつは今まで見たことのないような、面白いと胸を張って言える作品を作っていきたいです。そして、もうひとつはやっぱり普段カメラを向けられないような人たちの姿を描いていきたいですね。
初めて監督した長編映画『黒い暴動』(16)では、かつて流行したガングロギャルたち。『サラバ静寂』(18)で言えば、音楽が禁止された世界でそれでも音楽を求めてしまう、まるで違法薬物に手を染めるようなアウトローの人たちとか、『転がるビー玉』(22)なら一見華やかな生活を送りながらメインストリームで生きてるように見えるけど、実はそのヒエラルキーの中では下層のほうで悩んでいる女の子たち。今後もそういう人々に目を向けながら、作品を作っていきたいと思っています。

『Love Will Tear Us Apart』
2023年8月19日(土)ユーロスペース他 全国ロードショー
監督:宇賀那健一
出演:久保田紗友、青木柚、莉子、ゆうたろう
前田敦子(特別出演)、高橋ひとみ、田中俊介、麿 赤兒 、吹越満 ほか
2023 年/87 分/シネスコ/5.1 サラウンド/DCP/カラー/R15
配給:VANDALISM/配給協力:エクストリーム
©️『Love Will Tear Us Apart』製作委員会
X:@MovieLovewill/Instagram:@lovewilltearusapart_movie
■宇賀那健一
高校時代から役者として活動。経験を活かして監督業をスタートする。『黒い暴動』(16)にて初の長編映画を監督し、その後『サラバ静寂』(18)『魔法少年☆ワイルドバージン』(19)『転がるビー玉』(20)『異物-完全版-』(21)『渇いた鉢』(22)などを次々と発表。国内外問わず多数の映画祭で高い評価を受けており、本作以降も年内に数本の監督作品が劇場公開を予定している。
文=浅香麻亜弥(トカナ編集部)
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提供元・TOCANA
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