日産サクラ 価格/254万8700〜304万400円 試乗記

【新世代スポーツ研究】BEVにして冴えた走り。サクラは都会の雑踏を「水を得た魚」のように駆け抜ける!
(画像=日産サクラ・G。サクラとBROS車の三菱eKクロスEVの合計生産台数は約1年で5万台を突破。新世代BEVとして高い人気を獲得。2022-2023日本カー・オブ・ザ・イヤーも受賞した、『CAR and DRIVER』より引用)

低重心と鋭い加速、それが規格外の楽しさを生む!

スポーツカー=気持ち昂るクルマではあるけれど、その逆は必ずしも真ではない。スポーツカーでなくとも昂るクルマ、運転していてスポーツを感じるクルマはたくさんある。
スポーツカーとは厳密にいうと「ドライバーと一体となって走ることにすべてを捧げたクルマ」だ。それゆえ実用性の追求は二の次で、各部はドライバー中心の設計となっている。だから運転して気持ちが昂るのは当然というもの。むしろ速い、遅いよりもそれが重要だ。昂らないのであれば、それはスポーツカーではない。

けれども、ドライブ中に気持ちが昂ることはスポーツカー以外であっても経験できる。たとえばそれが「クルマ運転好き」にとって新鮮な体験であれば、気分は大いに盛り上がる。
筆者が初めて「自動運転車」に触れたとき、あれはほぼ四半世紀も前の体験だったが、自らは運転に関わっていないにもかかわらず確かに大興奮した。これが次世代の「ドライブ」なのか、と。

【新世代スポーツ研究】BEVにして冴えた走り。サクラは都会の雑踏を「水を得た魚」のように駆け抜ける!
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)
【新世代スポーツ研究】BEVにして冴えた走り。サクラは都会の雑踏を「水を得た魚」のように駆け抜ける!
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)

そこまで極端でなくとも新しいスポーツ性を感じるモデルは少なくない。さしずめ日産サクラはその代表例だろう。実用的なスタイルのKカーであり、電気自動車(BEV)でもある。ルックスはどう贔屓目に見てもスポーツカーではない。30年前に誕生したワゴンRから連綿と続くKカーの典型スタイル、日本発明のトールワゴンミニというわけで「スポーツ」とは最も縁遠い存在にさえ思える。

けれどもその乗り味はこれまでのKカーとは一線を画していた。電動化にあたって車体の骨格作りをイチから見直した結果、すべてにわたって 「規格外」の製品となっている。単にエンジンを電動パワートレーンに積み替えたクルマではないのだ。

サクラに乗っていて最も感心するポイントは、Kカーに乗っているとは思えないこと。もう少し大きなクルマを運転する気分である。それゆえ電気モーター+バッテリーによる速やかな加速が本当に心地よく、低重心を効かせたハンドリングを積極的に味わおうという気にもなる。不安感がまるでないのだ。クルマへの信頼感という点では、ふたクラス上、1.6リッターあたりの実用車に匹敵し、195Nmの豊かなトルクを武器にした加速はちょっとしたスポーツカー並み。その小ささと相まって街中ではほとんど「無敵」である。それが楽しい。

【新世代スポーツ研究】BEVにして冴えた走り。サクラは都会の雑踏を「水を得た魚」のように駆け抜ける!
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)
【新世代スポーツ研究】BEVにして冴えた走り。サクラは都会の雑踏を「水を得た魚」のように駆け抜ける!
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)

想像してみてほしい。込み合った都会の街路、わがもの顔で走る大型SUVや爆音を響かせるスーパーカーなどの「隙間」を、まるで水を得た魚のようにスイスイ抜けていく爽快さを! トールワゴンでありながら、そんなことは視線の高さ以外にさほど感じさせず、まさしく抵抗の少ない場所を自らより分けて流れるように走る。そんなKカーは他にない。

私の友人にスーパーカー乗りでありながら普段はサクラで京都市内を駆け巡る人がいる。なんならランボルギーニに乗っているときよりも気分はいいらしい。これを新しいスポーツと呼ばずになんと呼ぶ?