選り好みするから失敗する

しかし、真似をすることは実際大変難しい。ほとんどの人は頭でわかっていても、有力者の真似を完結させることはできないだろう。なぜだろうか?

まず1つには選り好みするからである。人は一般的にやるべきことではなくやりたいことをしてしまう。自分は英語を教えているが、「まず英単語を学びましょう」とその必要性とともにメソッドを伝えても、言われた通りにせずいきなり英会話をやってしまう人は少なくない。また、ある結婚相談所の経営者は「あなたはこういう人がおすすめ」と提案しても、ことごとく条件や属性とは合わない人にばかりに応募すると嘆く。結果、まったくお見合いが成立せず、ひたすら振られ続ける人は少なくないという話がある。

うまくいかない人は成果を出すことより、目先の自己満足を優先してしまう。いくら効果的だと論理的に説明されても、自分がやりたいことを優先してしまうようでは、真似を完結できず結果は出せないのだ。

適当にやるから失敗する

もう1つはリサーチ力不足である。真似をするのは簡単だと思われがちだが、実際に効果を出すほど真似をするのは大変難しい。なぜなら時間と忍耐を使って真似をする対象のリサーチをしなければいけないからである。自分は「この人の書く文章はすごい」と感じた対象を見つけた時、その人物が書いた300ほどあった過去記事のすべてを読み、1記事ごとに優れた表現や文章構成の技術、言い回しなどのすべてをメモを取り、自分の記事に取り入れた。

また、YouTube動画で優れたチャンネルを見つけた時も同じように、全動画を見てひたすらメモを取った。トータルで3ヶ月くらいリサーチに時間をかけたが、そのおかげで文章や動画の技術を取り入れ大きく向上した。1、2つだけを見て表面だけを真似してもまったく足りない。やるなら全範囲を網羅的に徹底的に時間をかけるくらいでなければ、技術の真似はできないのだ。

真似は悪いことではない

最後は真似の効果を理解できていないことだ。人によってはプライドが邪魔しているかもしれない。世間一般的には「真似をすることはだめなこと」というイメージがあり、最初さから最後までオリジナルで勝負しようと考えてしまう(もちろん著作権侵害はNGだ)。だが真似は本当にだめなのだろうか?

日本にはコンビニが複数社あり、競合は先駆者を真似たといえるかもしれない。だが、これによりほどよく競争原理が働きそれぞれに魅力的な商品や特色を出して消費者は選択する豊かさを享受している。

1社だけで独占している業界なんてほぼない。出版業界でも英会話業界でも似たような商品サービスを出すライバルだらけだ。GoogleやAmazonにも先駆者はいたが、今は競争に生き残ってリーディングカンパニーとして消費者が支持している。オリジナルにこだわりすぎる必要はない。そば屋の大将も予備校講師もみんな先駆者から知識や技術を真似て今があるのだ。なんなら赤ちゃんは親の会話を真似て育っていく。つまり、みんな真似をして今があるのだ。

徹底して知識や技術を真似するのはカッコ悪いことではない。なぜなら誰にでもできることではないからだ。優秀な対象を真似る、というのはもはや技術であり成功するための一要素と考えても良いのではないだろうか。

 

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