オーストリア国営放送(ORF)はロシアの宇宙へのカムバックを大きく報道し、ロシア問題専門家のインスブルク大学のゲルハルト・ゴッドマン教授と欧州宇宙機関(ESA)のロシア事務所の責任者レーネ・ピシュル氏にインタビューしていた。

ゴッドマン教授は、「月探査機『ルナ25』という名称は恣意的にソ連時代の輝かしい宇宙開発史を想起させている。1957年に人工衛星を打ち上げ、59年に宇宙飛行、そして61年に有人宇宙飛行を成功させた。米国との競争で輝かしい勝利を収めた。ウクライナ戦争でロシアは国際社会の制裁下にあるが、ロシアは宇宙開発を継続できる能力を依然有していることを世界にデモンストレーションしたわけだ」と分析し、「ロシア国民は自国の技術力を誇り、科学者を誇ることで、制裁下でもロシアは大丈夫だという印象を受けるだろう。ロシアの国営メディアもルナ25の打ち上げ成功を大きく報道している」という。ちなみに、ロシアの月探査はソ連時代の無人探査機「ルナ24」(1976年)以来、約半世紀ぶり。

ピシュル氏は、「ウクライナ戦争でESAはロシアとの共同計画をストップしたが、技術的な連携は続いている。宇宙飛行士トレーニングは継続している。ロシアの宇宙開発計画で最大の困難は国内で製造していない電気部分の機材が手に入らないことだが、ロシア側は様々なルートを駆使しそのハードルを克服するだろう」と述べている。

プーチン大大統領は「ルナ25」の打ち上げ成功を聞き、「継続的な宇宙開発の成果だ」と強調している。プーチン氏にとって久しぶりの朗報だろう。プーチン氏は自身のナラティブ(物語)に酔うのを止め、広大な宇宙の神秘に心を寄せよ。

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年8月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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