ロシア発のニュースは多くはプロパガンダで、受ける側もその事を知っているから、そのまま鵜呑みにすることは少ない。プーチン大統領がウクライナに軍侵攻させて以来、戦争の成果を含みプロパガンダ情報で溢れている。そのような中、ロシアの無人月探査機「ルナ25」がモスクワ時間11日午前2時(現地時間)、極東アムール州ボストーチヌイ宇宙基地から打ち上げられ、成功したというニュースが流れてきた。久しぶりにプロパガンダ情報ではなく、リアルなニュースだ。

ロシアの無人月探査機「ルナ25」の打ち上げの瞬間(2023年8月11日、オーストリア国営放送(ORF)のスクリーンショットから)
「ルナ25」の発射は計画では2012年の予定だったが、技術的な理由で遅れてきた。いずれも宇宙王国時代を築いた時代の「ルナ」という名称の月探査機の打ち上げ成功は「ソ連の栄光」時代を思い出す契機となる事は間違いない。
1961年、人類初の宇宙飛行士となったユーリイ・ガガーリン大佐がボストーク1号から眺めて「地球は青かった」と述べたことが伝わると、地球に住む私たちに言い知れない感動を与えたことを思い出す。美しい地球に私たちは住んでいるのだ、という感謝の心すら湧いてきた。ただし、ガガーリン大佐は後日、「私は周りを見渡したが神はいなかった」と述べたという。無神論国家のソ連共産党政権の宇宙開発は当時から政治的プロパガンダが重視されたわけだ(「なぜ人は天を仰ぐのか」2015年10月10日参考)。
ロシア側の説明によると、「ルナ25」は4日半の飛行後、月の南極付近に着陸し、月の地下資源を調査する。インドが7月に打ち上げた無人月探査機「チャンドラヤーン3号」が今月23日ごろに南極付近への着陸する予定だが、タス通信によると、ロシア国営宇宙企業ロスコスモスのボリソフ社長は11日、「ルナ25」がインドより早い今月21日に着陸する見通しだと述べている(モスクワ時事)。
宇宙開発は常に競争が伴う。冷戦時代は米国との競争、今日は米国だけではなく、中国、インドなど新興国がレースに参加しているだけに、競争もハードだ。なお、ロシアは2040年までに月面で中国側と連携して宇宙基地を建設するという。