直近のニュースで好対照のケースです。ソニーと楽天の決算発表に伴う見出しです。ソニーには「ソニーG『再成長へ種まき』 4~6月、純利益17%減」とあるのに対し、楽天のそれは「楽天グループ、新プランも黒字遠く 最終赤字1399億円」とあります。
これをパッと見るとソニーはやっぱりすごいな、というイメージに対して楽天はダメだよな、になります。そして悪いことに過半数の読み手はこの記事をクリックすることはないのです。なぜならソニーにも楽天にもそこまで興味が無いからです。ただ、印象としてソニー〇、楽天✕になるわけです。

一見対照的な業績の楽天とSONY 両社HPより
では実際はどうなのか、といえばソニーは大黒柱の一つ、ゲーム事業が成長せず苦戦です。再成長へ種まきの意味は苦戦している現状の事業ではまずいので新たに事業開発に着手したということです。一方、楽天は昨年末あたりで底打ちし、改善が目に見えて進んでいます。また三木谷氏の野心と采配の切れが戻ってきた感じです。つまり実際の内容は私が読み取る限り真逆です。
なぜこうなるかといえば日経も日経ビジネスも「好きな企業、与しやすい企業」と「苦手、嫌いな企業」があるのです。そのテイストが企業決算の見出しには見事に出るのです。つまり度量が狭いとも言えます。
表現とは紙一重です。例えば自分の子供がテストで80点取ったとしましょう。「80点しか取れなかった」と「80点も取った」では全然印象が違います。メディアはこの印象操作をするわけです。そして日経にはペソミスティック(悲観的)な記事のトーンが目立つのです。記事本文も数字はこうなっているが識者は〇〇について懸念を示しているといった具合です。記事の公平性を保つなら前向きのコメントも併せて紹介したうえで記事の中立性を保つべきです。
日経が世界レベルの経済情報紙として今一つ活躍できなくなったのは編集側の意向も大いにあると思われます。また、記事の外に有識者のコメントがでる「Think」も実際に参加しているコメンテーターの数は極めて限られています。いつも同じ人が同じトーンでコメントする、そんな感じです。記事のよいしょでしょうか?逆立ちしてもユーチューブ登録が100万人に近い高橋洋一氏なんか出てこないわけです。日経のお友達はコメンテーターも書き手も仲良しで限定されたサークルの中で記事を作り上げている、そういうことになります。
日経が世界レベルの経済専門紙になりたいならFOMCの記者会見で前2列内の席を確保し、議長に毎回確実に質問できるポジションを得るぐらいでないとダメです。このマスコミのレベルは日経に限らず、他紙も同様です。日本のメディアは一定のファン層をつかめばよいようにも見えます。ただ、それでは世界レベルの高級情報メディアになれないでしょう。
これはテレビニュースも同様です。まず、ニュース報道の「色」をあらかじめ決め、アナウンサーのしゃべるトーンを明るくするか、暗めにするかでNarrative (物語)に仕立てます。そして残念なことにセロトニンが少ない日本人には不安要素を増長させ、「いやねぇ」「心配だわー」「困るわねぇ」を連発させるようにするほどメディア受けは良く、ウッシッシなんです。皆さん、乗せられているということです。
お前はどうしているのか、と言われれば一次情報が取れないものは複数のニュースソースを見るしかありません。経済情報でも海外発のものはロイターやブルームバーグをはじめ英文の方を基本に読み取るようにしています。つまりネットで情報一発、のはずが、余計手間暇かかることもある、ということでしょうか?
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年8月11日の記事より転載させていただきました。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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