便乗値上げ分析の産業連関表をスクープ
当時の新聞の縮刷版をみると、「ついに石油割り当て立法」、「石油耐乏生活スタート、緊急対策決まる。暖房温度20度、テレビ、車自粛」、「灯油1缶288円。モノ不足、物価加速」などという見出しの記事が連日、第1面に載っています。
年が明けて1月、山下英明・事務次官が記者会見で「便乗値上げが目に余る。製品コストにしめる石油、電気のコストを計算して、便乗値上げの実態を明らかにしたい。原油は2倍(最終的には1年で4倍)になっていても、製品の製造コストにしめるエネルギーコストは6-7%程度のものも少なくない。それをはるかに上回る率の値上が行われている」と、発言しました。ゼネラル石油で「石油危機は千載一遇のチャンス(便乗値上げでボロ儲けできる)」という発言があったと報道され、社会的な問題になっていた時期です。
翌日の他社の記事を読むと、山下次官の「便乗値上げを調査する」という程度の内容に終わっています。私は「この問題は産業構造課が調べているに違いない」とピンときて、会見の直後、産業構造課へ行きました。
課長がタイミングよく課長席におり、次官発言の内容を伝えると、待ってましたと言わんばかりの雰囲気です。早速、引き出しを開け、数字がびっしり並んだ何枚かのペーパーを取り出し、渡してくれた。産業構造課という地味な仕事をしているこの課を他社はマークしていなかったのでしょう。私は時々、勉強のために足を運んでいました。
ペーパーは産業連関表で。150種類の物資、製品がエネルギーコストの上昇を受け、価格に転嫁した場合、どの程度の値上がりになるのかを詳細に調べた表です。コンピューターを駆使した産業連関分析です。課長は「便乗値上げの実態が一目瞭然だ。標準価格(適正価格)というものを製品、物資ごとに定め、法律で守らせる。標準価格設定というところまで書いて下さい」と、言うではありませんか。
読売新聞しか入手していない資料です。「電気17%、セメント15%」などの大幅値上げは仕方ないにしても、一覧表をみると確かに大多数は6-7%で、「紙5.6%、砂糖3.5%」などとなっています。
エネルギー・コストの上昇を価格に反映させるのは当然でも、実際には、その何倍もの値上げになっている製品、物資が多かった。紙もその一つで、値上がりするから消費者が買い急ぐ、買い急ぐからさらに値上がりする。