大荒れな決勝レース
前日とは打って変わって大雨、曇り、晴れと全部の天気が目まぐるしく変わる天候。タイヤ選択が難しく、路面コンディションも複雑になることが容易に想像できる。ピット戦略が重要なレースになることがレース前から感じられた。

スタートは井口だ。フロントローのグリッドに着いた時は晴れていた空が、急に暗くなり雨が降り出した。しかも大雨。メカニックは急遽レインタイヤに交換をすることになった。他チームも同様の対応しているため、スタートがディレイし、その後Safety Carでのスタートとなった。

SCでローリングを行ない3ラップ目にスタートが切られた。ところが、スタートが遅れたことやSCでの周回中に雨は小雨になり、路面はどんどんと乾きドライアップしてくのだ。そんな中オープニングラップで井口はトップに立つ。が、予選3位の11号車のGAINER TANAX GT3 GT-Rにストレートで抜かれてしまう。
その後、路面はどんどん乾き始め、井口は徐々に順位が落ちていく。9周目、チームはスリックへの交換を指示する。ここはレース勝負の最初の分岐点だ。
450kmレースでピット2回が義務。タイヤ交換をいつどのタイミングで、給油はどれくらいするのか、というピットストップの時間をどのように計算するのかがキーになる。
チームは早々のピットインというわけで、井口のスティントをロングにした。450kmは100周のレース。半分の50周で山内に交代という作戦だ。一方で33周を3回という考えでタイヤのフレッシュ時間が長ければラップタイムは速いという作戦もあるが、前者のハーフ&ハーフの作戦を取ったことになる。

混沌とする順位争い
井口はピットインで21位まで順位を落とすものの、コース上はレインタイヤとスリックタイヤのマシンが混走するカオスな状況。路面はますます乾いていき、スリック勢が上位に上がってくる。11周目に21位の井口はなんとその翌周には11位にジャンプアップしているのだ。ピットインのマシンとごぼう抜きの走りで順位が変わる。
全車がスリックになると井口は10位付近で落ち着く。しかし244号車が炎上するトラブルが発生し、SCが入る。7周ほどSC先導で走行後、リスタートとなり、井口はひとつ順位をあげ9位になる。その後6位まで順位を戻し51周目に山内と交代した。
山内はピットアウト後16位まで下がっているが、ピットインをしていないチームもあるため、順位は混乱する。が、目の前を走るマシンを次々に抜き去る速さを見せ、10ラップする間に11位にまで順位を戻していた。
そして今度は25号車が炎上するアクシデントが起こり、SCが入る。マシンの炎上は大きく、消化活動をするためレースは赤旗中断となった。
約45分間中断したのち、再スタートとなったが、再開直後にひとつ順位をあげ10位に。この時山内はレインタイヤを装着し、雨の中9位、8位と順位を上げていく。途中、他のマシンに押し出される場面もあり、一旦11位に落ちるものの、再び挽回し8位にまで戻した。

レースも後半になると雨は小雨からドライアップへと変わりつつあり、スリックへ交換する作戦もある。だがギャンブルでもある。が、チームはレインのまま、ピットに入れず最後まで走らせる選択をした。
最終ラップ・最終コーナーで
雨が残っているうちに山内はどんどん順位を上げ、81周目は8位だが、83周目には5位に浮上する。トップを走っていた4号車GOOD SMILE Hatsune mikuがスリックに交換のためピットイン。その直後4号車に変わってトップの7号車もスリックへ交換のためピットインした。だが、4号車ベテラン谷口信輝はスリックでは厳しかったのか単独スピンし順位を大きく落としてしまった。
残り10周を切ってもレインとスリックが混走するカオスな状態は続き、山内は86周目にトップに立った。91周目までトップを走り残り2周。スリックに交換していた11号車GT-Rが山内より10秒ほど速いラップタイムで追い上げてくる。その差は歴然で、追いつかれた瞬間に抜かれ、山内は2位に後退。

ラストラップ。2位を走る山内。3位にレインタイヤの60号車。山内のレインよりはコンディションがよく2秒ほど山内より速い。そしてその後ろは7、6号車が猛烈な勢いで追い上げてくる。フレッシュなスリックタイヤを履きBMW M4 GT3はセクター3で2位争いに追いつく。
60号車がブロックしてくれれば、山内は2位だ。だが、7と6号車をブロックすることもできず2台をあっさりとかわし、山内は4位、60号車は5位となった。
そして最終コーナー立ち上がりで60号車は山内のリヤに接触。山内は使い切ったレインタイヤでは抵抗も虚しくスピンを喫した。山内はすぐに立て直し、チェッカーを目指し7位でフィニッシュできた。
その後60号車には「他車への衝突行為」と判定され40秒のペナルティとなり、山内は6位という結果になった。
あとちょっとで表彰台というシーンだっただけに悔しさが残るものの山内は「悔しいけど仕方ない」とコメントしている。また井口は「難しい天候のレースでしたけど、チームの判断は良かったと思います」と話した。

獲得ポイントは5点を追加し11点。ランキングは一つ上がって12位と、依然として厳しい状況だ。ただトップとは29点差なので、1回の優勝で20点獲得できることを考えれば、可能性はまだあるという状況だ。
次戦は真夏の祭典「鈴鹿450kmレース」が8月最終週の26日(土)、27日(日)に三重県の鈴鹿サーキットで開催される。第3戦ではポールポジションを獲得しているだけに、期待されるレースだ。
提供・AUTO PROVE
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