専門家の意見は、その分野の深い知見に基づいているため、私たちに新たな視点や気づきを与えます。しかし、それが常に、絶対的な正解であるとは限りません。
ときには、私たち一般人の「なんとなくそう思う」「そんな気がする」という直感が、現実をより正確に反映することもあるのです。
米国ノースカロライナ州立大学(North Carolina State University)の研究者らの調査によれば、犬が実際に示した「痛み感受性」は、一般の人々の印象に近く、獣医師らがこれまで下していた評価とは一部異なっていたそうです。
研究の詳細は、2023年6月26日付の『Frontiers in Pain Research』誌に掲載されました。
犬の「痛み感受性」評価:獣医師と一般人の間にギャップがあった!
大きなワンコと小さなワンコ、あなたはどちらが痛みに強く、どちらが弱いと思いますか?
大きな体格の犬が痛みに強く、小さな犬が痛みに弱いと考えるのは、一般的な印象ではないでしょうか。
事実、アメリカの一般の人々も、「大型犬は痛みに強く、小型犬は弱い」という意見を持つ傾向にありました(下図右)。しかし、獣医師の評価(下図左)は、必ずしも体格に基づくものではなく、一般の人の評価との間にギャップがあったのです。
例えば、シベリアン・ハスキー(赤の棒グラフ)の痛み感受性について、一般の評価は「感受性45(痛みにまあまあ強い)」であるのに対し、獣医師の評価は「感受性70(痛みに弱い)」でした。

下の図は、獣医師たちの評価をもとにした分類です。どうでしょう。あなたの評価と異なる点はありませんか?

ノースカロライナ州立大学の研究者らは、この分類(つまり、獣医師による「犬種ごとの痛みの感じ方の印象」)が実際に正しいのか、すなわち獣医師の印象と実際の痛み感受性とは一致するのかという点に興味を持ちました。
そして、健康な成犬(10犬種、149頭)を対象に、痛みの感受性の閾値(生体に反応を起こすのに必要なその作用の最小の強度)を測定し、分類との比較を行ったのです。