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会長・政治評論家 屋山 太郎

中国経済の現状は見直しの見当もつかないほどひどい状態だと言われている。GDPの成長率も年率0.5%と言っていたのに、0.1%に終わった。何が悪くて悪化したのか原因は発表されない。失業率は20%に落ち込み、各産業が不景気に陥っている。特に再起困難なのは不動産業だという。

最大手と言われた「中国恒大」は、これまでに3回ほど倒産の噂があったが、政府のテコ入れで何とか持ちこたえてきた。しかしいまは2008年の米国のリーマンショックとの比較が行われている。リーマンは1929年以来、最悪の打撃で、いま恒大の破綻はリーマンに匹敵すると言われている。リーマン時代とばっちりを食ったのは、ドルで決済しなければならない米国の輸入業者ばかりだった。

そこで輸入業者が極度に用心しているわけだが、中国から会社を引き上げる傾向を倍加して、中国自体の再生を困難にしている。

中国の“土地問題”が厄介なのは、土地は県、町、村の公共団体に権利があり、誰もいない場合は、党委員会が所有権を持つということである。あるA市がここに1000戸の住宅を作ろうと思えば、市が1000戸に見合う住宅ビル(住宅街でも良い)の用地を国から買う。勿論、転売は禁じられており、買った公社は約束通り建設を始める。事業資金を集めるのに、公社は居住者を募って配分金を集める。配分金は月額で公社に収めなくてはならず、放棄すれば取権放棄となる。

ところが公社がA地だけでなくB地の開発を始めたとする。住宅会社が一軒だけではなく何軒も建てる方が効率が良いというのは常識だ。しかし1ヵ所の建設進度が遅くなると、他の事業の進度にかかってくる。まだできない住宅ビルの前に「約束が違う」と座り込む住民を至る所に見かける。そこには水道も下水道もないから、さながら乞食生活である。