ドイツの複数の世論調査によると、野党第1党の「キリスト教民主同盟」(CDU)が依然支持率でトップを走り、CDUを追ってAfDが第2位だ。両党の差はここにきて縮まってきている。CDUのフリードリヒ・メルツ党首は7月23日、「地方レベルならば、AfDとの連立も考えられる」と発言したことが報じられると、AfD以外の政党から激しい批判の声が上がったばかりだ。同党首はその翌日、党内の批判を受け、発言内容を撤回している(「独CDUメルツ党首の『タブー破り』」2023年7月25日参考)。
AfDはメルツ氏の発言を歓迎し、「今後はCDUとの協力を可能にしたい」と、メルツ氏に早速エールを送っている。AfDの党首ティノ・クルパラ氏は、「わが党を阻害してきた防火壁から最初の石が落ちた。州と連邦で私たちはその壁を取り壊すだろう。勝者は市民だ」と豪語している。
参考までに、シュピーゲルの最新の世論調査(7月26日~8月2日)によると、CDU/CSUの支持率は26%で第1位、AfDは第2位で社会民主党(SPD)と共に19%だ。民間ニュース専門局ntvの調査ではAfDは20%を超えている。AfDは過去1年間で支持率をほぼ倍加している。
AfDは旧東ドイツのテューリンゲン州のゾンネベルク郡で6月25日に行われた選挙で、AfDの候補がCDUの候補との決選投票を制し、首長に選出された。そしてザクセン=アンハルト州では市長に選出された。ちなみに、ドイツでは連邦憲法保護庁が2021年3月にAfDを右翼過激主義の疑いがあるとして監視対象に指定している(「極右政党の“政権パートナー探し”」2023年6月14日参考)。
マクデブルクの党大会と欧州議会選挙総会では、AfDは有権者の反発を警戒し、反EU政策を標榜する過激なプロパガンダを一部修正する一方、増加する移民・難民対策では従来の強硬路線を一層強め、欧州議会選を勝利し、次期連邦議会選では政権入りを目指しているわけだ。その試みが成功するか否かは欧州の政治全般にも影響するだけに、動向が注視される。
なお、AfDは過去、難民の急増、新型コロナ感染拡大、ウクライナ戦争、エネルギー危機など、欧州が危機に直面している時に躍進してきた。その危機が続く限り、AfDの躍進にストップをかけることは難しい。ということは、難民・移民対策とウクライナ戦争の早期解決がAfDの躍進をストップさせる最短の道といえるわけだ。ショルツ政権とCDU/CSUなど既成政党は国民が不安を感じる難民問題、ウクライナ戦争の解決の為に党の壁を越えて結束することがAfD対策の道と再認識することだろう。妙案奇策はないのだ。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年8月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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