ドイツの政界で今、最も大きな話題は、支持率で急上昇する極右政党「ドイツのための選択肢」(AfD)の勢いだ。独週刊誌シュピーゲル最新号(8月5日号)はAfDの躍進について特集し、どうしたら、AfDの躍進をストップできるかをテーマにしている。

欧州議会選挙総会で候補者を選出するAfD代表団(AfD公式サイトから)

AfDの第14回党大会が先月28日、旧東独ザクセンアンハルト州のマクデブルクで開催された。ドイツのメディアによると、同大会では過激派な民族主義を標榜する派閥と政権入りを目指し、実務的な路線を主張するグループの間で激しい議論が展開された。その後、欧州議会選挙総会が7月29~30日、そして8月4日~6日まで計5日間の日程で行われた。

欧州議会選挙総会では来年実施される欧州議会選への候補者(35人)選出が行われた。AfDは創設以来、欧州連合(EU)に対しては懐疑的なポジションだ。欧州議会選のプログラム作成(93頁)の段階(草案)では「EUの秩序ある解消を目指す」と明記した反EU路線が明記されていたが、党内から「解消」という表現に「強すぎる」といった抵抗が出たため、指導部内の話し合い後、最終的には「解消」という表現は削除され、「EUは改革不能で失敗したプロジェクトだ。各加盟国の主権が保たれる新たな『欧州国家同盟』を目指す」(ヴァイデル党首)という表現でまとまった。

過激派が要求してきた政策(草案)の多くは最終案では削除されている。たとえば、AfD内の過激派思想の中心的人物テュ―リンゲン州のAfD党首ビュルン・ヘッケ氏の「グローバリストのエリート」という反ユダヤ陰謀論的な用語はプログラムには取り込まれなかった(独週刊誌ツァイト8月6日電子版)。議論はしても、それを党の政策と受け取られることを避けるわけだ。

AfDの欧州議会選の筆頭候補者に選出されたマクシミリアン・クラー氏は党内では過激派に入る。同氏も最終的には妥協案を受け入れている。ユーロの即廃止について「EUとユーロは変えるべきだが即座に廃止する必要はない。急いで共同通貨から離脱することが、莫大な費用を発生させるからだ」と説明、北大西洋条約機構(NATO)の問題でも「現時点では完全にNATO加盟国以外の選択肢がない。ただし、唯一の選択肢であるべきではないと願っている」と述べている、といった具合だ。

AfDは過激な表現は削除されたが、最終的にはAfDの基本路線は変わらず、メディアは「AfDの右シフト」と解説している。移民問題では移民を制限し、国境に物理的な障壁を設ける。そして可能であればユーロを廃止し、アメリカからの独立を目指し、防衛能力を段階的に強化していく。気候変動問題では電気自動車への税優遇などを廃止し、世界の環境保護運動を「非科学的な気候騒動」と受け取っている、といった具合だ。