外国を意識しない限り、国民意識が生まれないのと同じように、企業グループの外を意識しない限り、グループに対する帰属意識は生まれない。働く人にとって、当該企業グループに属することは何か特別のことであり、世間一般で働く人とは異なる扱いを受けているとの実感をもてること、それが帰属意識の実質的内容だろうから、多少の語弊はあるものの、特権意識と呼び替えてもいい。

この特権意識の醸成が人事処遇制度としての意味をもつのは、いうまでもなく、それが就労意識に影響を与えることで、働く人の勤勉と精励、前向きな勤務態度、自主的な貢献等を引き出し、生産性の向上につながって、企業の利益になると想定されているからである。

ところが、こうした働く人の意識への影響は、給与や賞与からは生まれない。なぜなら、給与や賞与は、貢献に対する正当な対価とみなされる限り、その水準にかかわらず、少しも特別なものとしては受容され得ないからである。それに対して、福利厚生制度の場合には、貢献に直接には連動させないことで、逆に特別の意味を付与させることができるわけだ。

森本 紀行 HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長 HC公式ウェブサイト:fromHC twitter:nmorimoto_HC facebook:森本 紀行

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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